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夜明け。(1)

 †  どんなに長い夜でも必ず夜明けは来る。  宝が次に目覚めたのは空が白じんだ頃だった。  どうやら自分は丞に延々と抱かれ続け、いつの間にか気絶していたらしい。  目覚めた宝の隣では、丞は目を閉ざし、深い眠りに入っていた。  ウェアウルフが治癒力に長けているというのは本当らしい。ライフルで撃たれた傷の出血はもうすでに止まっている。  もう少し、彼の端正な顔立ちを見ていたい。けれども次期に彼は目を覚ますだろう。 (だけど、もう少しだけ……)  宝は彼が目覚める前に消えるつもりだった。  想ってもいない自分を抱いたと知ったら、いくら不本意でも律儀な彼はきっと自分を側に置こうとするだろう。  そうなれば、本当に好きな人が現れた時、それでも自分を選ぶに違いない。そうして丞は自分自身を犠牲にしてまで宝に尽くす。

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