55 / 96

夜明け。(2)

 それは一見、宝にとって嬉しいことだが、しかし丞が自分を嫌っているという事実は変わりない。  好きな人にはいつも心穏やかに過ごしてほしいと思う。  だから宝は、この情事のことを誰にも言うつもりはなく、胸の奥に仕舞い込むつもりだった。 「好き」  ぽつりと告げたその言葉は、けれど眠っている丞には届かない。  丞の胸に顔を埋め、抱かれた余韻に浸っていると、丞の身体がわずかに震えた。  どうやらこの恋も夜が明けるらしい。  宝はベッドから飛び起きると、無造作に落ちているシャツとズボンを拾い上げ、キスマークが付いた身体をなんとか隠した程度の姿になる。  気になるのはあれから幾度と達したために残った情事の後だ。自分の精が放たれている丞の衣服を彼の身体から剥ぎ取ると、手近にあるゴミ箱に突っ込んだ。

ともだちにシェアしよう!