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目覚め。(4)

 いや、そうだとすれば、智也の言葉のことも、腕に巻かれた包帯のことも辻褄(つじつま)が合う。 「田牧さんは俺の事を何か言っていたか?」 「いや。宝ちゃんが気絶させてくれたおかげでな、泪と口裏を合わせて昨日のことは全部夢だって事にしてる。だけどさ、宝ちゃんって普段おっとりしてるけど、ああ見えて実はけっこう凛々しいのな。そういう意外性もまた可愛いんだけどさ……ってお前、ほんとに覚えてないんだな。ああ、あと安心しろ。宝ちゃん、口外はしねぇって約束してくれたぜ?」  真面目な宝のことだ。きっとその約束は守るだろう。  問題はそこではない。  丞が重要視すべきなのは、自分が彼を抱いたかどうかということだ。  もし、智也の証言が正しいなら、自分は彼を無理矢理抱いたことになる。  ウェアウルフという化け物の自分に、だ。 「なぜ、あいつは何も言ってこないんだ」

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