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目覚め。(6)

 この会社のプロジェクトにしたってそうだ。丞自ら志願して人間から遠ざかり、これでやっと人里離れた山奥で平穏に仕事をすることができると安心していたのに、まさか彼がこの辺境の地に来るとは思わなかった。  丞は自分がウェアウルフという種族だったことを恥じていた。  ――いや、違う。宝と出逢ってから、自分が人間ではなくウェアウルフという種族を()み嫌うようになったのだ。  彼はそう、枇々木 宝という人間を心から愛していた。  可愛らしい二重の大きな目に赤い唇。まるで陶器のように透ける白い柔肌は繊細で、保護欲をそそられる。  それは彼をひと目見たその瞬間、丞の中で眠っていた母性が呼び覚まされるほどに……。  人種を越えた愛はけっして報われることはない。母も祖母も。そして曾祖母も、同じ種族同士で結ばれた。

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