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訪問者。(2)
なにせ彼らは自分たち人間とは違う種族、ウェアウルフだ。宝が本当に他言しないかどうかの再確認にやって来たのだろう。
宝は涙で濡れている頬を乱暴に腕で拭い去ると、阿佐見がいるであろう玄関へと急いだ。
足下がおぼつかない。丞に抱かれた身体はまだ熱を持ち、彼に貫かれた後孔は若干の痛みが残っている。
それでもこの痛みも気だるさも、いつかは消えていくのだろう。けれど、彼への想いは消える気がしない。
それだけ、宝にとって丞の存在が大きくなりすぎているのだ。
「はい」
ややあって、宝はようやく玄関に到着した。ドアとを繋げている鎖を外し、ドアを押す。
訪問者を見上げたその時、宝の心臓が本の一瞬鼓動を止めた。
そこにいたのは阿佐見でも斎でもなく、宝が想い続けていた彼――椎名 丞だったからだ。
「っつ!!」
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