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another story † 丞と泪(1)
†
「えっとね、わたしはこの秋出たばかりの新色のマニキュアと、それから新作のバッグを買ってもらおうかしら」
「はあ?」
時刻は午後五時を回っている。
今日のノルマを終えた今、オフィスに残っているのは丞 と宝 。そして阿佐見 泪 だ。
彼女は赤いマニキュアを手慣れた様子で塗ると、ふうっと息を吹きかけ、そう言った。
泪はいったい何を言っているのだろう。
話の内容が今ひとつ掴めず、丞はぽかんと口を開ける。
「宝ちゃんをお見舞いに行かせたのは誰だったかしら? あれがなかったらアンタは一生片想いのまんまだったわよねぇ」
彼女は呆気に取られている丞をじっとりと横目で捉えた。どうやら泪は催促をしたいらしい。
「何よ、別にお金には困っていないでしょう?」
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