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another story † 丞と泪(2)

 ……たしかに。自分は会社から優遇されている。一般の社会人に比べて年収も多い方だ。しかも自分は特に趣味といったものもなく、必要最低限しか使うことがない。  しかし、それは泪とて同じことで、自分を着飾ることが好きな彼女の場合、男に貢がせている。だからわざわざ自分が彼女のために何かを買ってやる必要などこれっぽっちもない筈だ。  それでも泪はこうして毎度、丞が何か失態をおかす度――たとえば、満月の日に魔力が増幅しすぎて暴れ回った時や、たとえば人前でウェアウルフに変身してしまった時など。フォローしてくれるその度に、あれが欲しいこれが欲しいとせびってくるのだ。  たしかに、丞は彼女にとても助けられている。しかし、である。こうも毎回事ある毎に金をせびられてはたまったものではない。 「…………」 (この女……)  丞の眉間に青筋が浮き出る。

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