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another story † 丞と泪(3)
「あの、どうかしたんですか?」
帰宅の準備を終えた宝は、丞と泪の会話が気になったらしい。近づいてくると首を傾げた。
「誰かさんがケチだなっていう話」
「えっ?」
泪は丞を睨みつけ、すると何を思ったのか、突然宝と向かい合った。
彼女は今、満面の笑みを浮かべている。こういう時の笑顔はもう知っている。何かよからぬことを考えている時のものだ。
丞の背筋に悪寒が走る。
「なんでもないのよ。あ、そうだ。宝ちゃん、今から一緒にケーキ食べに行かない? いいお店知ってるのよ。わたしの車でドライブなんてどう? 丞も智也も甘いものが苦手でね? ひとりじゃ寂しくって……」
泪はそう言うと、悲しそうに目を曇らせた。
これは間違いなく演技だ。寂しいと心から思っているわけではない。
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