95 / 96

another story † 丞と泪(4)

 というかそもそも彼女にはすでに恋人がいる。寂しいとは無縁の生活を送っている。だから彼女の言っていることを鵜呑(うの)みにする必要はないのだ。  しかし宝はとても純粋で優しい。だから彼女たっての願いを聞き入れるに違いない。現に今、宝はとても悲しそうに彼女を見ている。  このままでは宝が泪に横取りされてしまう。  そう感じた丞は身を乗り出した。 「わかった。買ってやるから店には一人で行け」 「わかればいいのよ、わかれば。じゃ、宝ちゃんまた明日ね」  泪の用件を聞き入れると、案の定、彼女は反旗を翻すと足早にオフィスを後にした。  彼女が向かう先は彼女の男に違いない。  そんな泪を尻目に、先ほど誘われた宝は困惑している。 「えっ? あの、ケーキは? あれ? 阿佐見さん? えと、椎名さん、ひとりは寂しいです……」

ともだちにシェアしよう!