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第1話
「コーナー、ステイ」
嘲笑を交えながらコマンドを発すると、目の前の背の高い男は、ぐっと眉間に皺を寄せながらも、教室の一番後ろの席の隅に移動した。
「そうそう、えらいでちゅね~」
「でけえ図体してるくせに、サブとかマジ笑える」
「一生そうしてな!」
嘲笑はいつの間にか馬鹿笑いにまで膨れ上がると、俺達は背中を向けて教室の隅に座っている男に皮肉と罵声をぶつけた。彼は何も言わないまま、じっと耐えるようにして俺達に背中を向け続ける。
その姿はまさに、従順な犬。
「行こうぜ」
その声を合図に、俺は教室を出ると、ちらりと背後を振り返った。夕焼けの茜色に染まる教室の中、彼の広い背中のワイシャツも赤く染まり、ひっそりと教室に溶け込んでいる。以前からずっとそこにある置物であるかのように。
「おい、礼。置いてくぞ」
その背中をぼんやりと見つめていると、不意に声を掛けられて、
「あ、おう」
俺はコマンドの解かれないまま放置されたサブの背中から目を逸らした。
――ダイナミクスなんて性を持っているのが悪い。サブなんて性なのが悪い。つまるところ、運が悪かったんだよ、お前は。
俺は仲間の元に駆け寄りながら、心の中でそう吐き捨てると、胸の中に微かに芽生えている罪悪感を押し殺した。
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