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第7話

月曜が始まって学校で会う翔吾さんは別人のようになった。 名前を呼ばれるのも出席をとるときだけ。 話もしなければ目も合わせてくれなかった。 でもそれでも翔吾さんの胸元には同じネックレスがぶら下がっている。 僕はもうそれだけでいいと思えるようになってしまった。 「城沼先生ちょっといいですか?」 「怖い顔して何の用だ。手短に頼む」 「あんたいっくんのこと好きじゃなかったんですか?そんな簡単に飽きて突き放すくらいなら最初からそんなことしないでください。俺がいっくんのこと幸せにします。」 「好き……だよ。飽きてもいない。俺は苺恋が好きだ。でも……どうしようもならない時だってあるんだ。」 「いっくん!帰ろっか〜」翔とした日以来翔はずっと僕といてくれる。 変わらずずーっと。 一緒に廊下を歩いているとあ、翔吾さんだ。 前から歩いてきた。 でも、翔吾さんの横には羽咲ちゃんがいた。 翔吾さんは辛そうな顔をして僕達の横を通って行った。 「いっくん。大丈夫?」 暗い顔をしていたらしい。 翔が心配してくれた。 僕ももっと強くならなきゃ。 次の日翔が言ってきた「もし、先生とまだ一緒にいたいならちゃんと話をしなよ。」 そう言われて僕はちゃんと話そうと思った。 翔吾さんに「今日話がしたいので放課後教室に来てください。」とLINEをした。 放課後ちゃんと来てくれるかなそう思いながら待っていた。 会うのを拒まれた日からLI○Eもしなかった。 もし嫌われてたら余計に悪化してしまいそうだったからだ。 「あ、先生……。」 「円、話ってなんだ。」 久しぶりに話した翔吾さんは少しやつれていた。 「最近元気?大丈夫?疲れてるみたいだけど無理しないでね?」 「それだけか?それならもう行くな」 そう言って教室を出ていこうとした。 「まって。なんで……。なんで会ってくれないの。なんで目も合わせてくれないの。もう僕のこと好きじゃない……?めんどくさくなった?こんな見た目だから?ぼくが男だから??なんで……なんで。」 「ちがう……ちがうんだ……俺は今でも苺恋が好きだ。好きで好きで。でもそれはダメなことで。苺恋を傷つけたくなくて……ごめん。」 何かあったんだと思った。 もうわがままはこれだけにして僕は我慢しようと思った。 「わがまま言ってごめんなさい。最後に……最後に1つお願い聞いて。最後に抱きしめて……いつもみたいに優しくて頭なでなでして。キスしてほしい。」 翔吾さんは何も言わず優しくしてくれた。 僕達のキスは涙で少し塩辛かった……。 僕の中で翔吾さんという存在は胸の中だけの存在になってしまった。 〜翔〜 最近城沼先生といっくんの様子がおかしい。 先生に聞いてみたけどどうしようもならない時だってあるんだと言われてしまった。 先生と生徒。 男と男。 その存在が邪魔になっているんだと分かった。 でもそれじゃない何かがあると思う。 良く考えれば最近りりが先生と一緒にいることが増えた。 最初は何も思わなかったが明らかに先生の表情がくもっている。 「おい、りり。」 「なーに?翔そんな怒った顔して」 「お前何かしたんじゃないだろうな」 「なになに?大好きな苺恋独り占めできるチャンスじゃない。私に感謝してよね」 やっぱり、りりの仕業か。 先生は脅されていると一瞬でわかった。 早く苺恋も先生も元に戻るといいなぁ。 END 翔吾さんと僕の関係がぐちゃぐちゃになって、4月が来た。 クラス替えだ。 僕と翔はこういう時絶対に毎回と言っていいほど同じクラスになる。 羽咲ちゃんは今回は違うクラス、 少しほっとした。 担任の先生は翔吾さんじゃなくなってしまった。 「いっくんまた一緒だね〜これからも俺達は2人で1つだね!」 翔は相変わらずテンションが高い。 翔吾さんのことはまだ忘れられない。 今でも話はしなくても会えただけで好きだなぁって実感する。 3年生になってからというもの何も変わらず淡々と月日は経っていった。 そんな8月の終業式。 「え〜。本日を持ちまして体育を担当して頂いていました城沼先生はご実家の事情で辞めることになりました……」 え、どういうこと?なんで?何も聞いてないよ。 離れ離れになっちゃうの?頭の中がぐちゃぐちゃになって混乱していた。 その後の校長の話は何も入ってこなかった。 終業式を終え、教室で頭が真っ白な僕のとこに羽咲ちゃんが走ってきた。 「ねぇ!先生のこと何か知らないの!?なんで辞めるの?!なんで……なんであんたなの……私が脅してた意味はなんだったのよ……」 泣きながら怒りをぶつけてきた。 いや、待てよ。翔吾さんを脅してた?全て一瞬にして理解出来た。 パンッ 気がついたら僕は羽咲ちゃんの頬を叩いていた。 「なんでそんなことできるの?ありえない。」 羽咲ちゃんは驚いた顔をしていたがここには居たくなかった。 翔が追いかけて来て一緒に歩いていた。 「珍しいね、いっくんがあんなに怒るなんて」 「なんで僕あの時叩いたんだろ。気がついたら手がでちゃってた。」 「それだけ先生が大事なんでしょ?一応何があったのか連絡してみたら??」 翔に施されて僕は翔吾さんにLI○Eを送った。 (何があったんですか?大丈夫ですか?ご飯はちゃんと食べてください。) いくら待っても返事は来なかった。 あの日以来羽咲ちゃんとは話してない。 翔もいつもどうりで僕もだんだんと先生を忘れようと戦っていた。 〜2月〜 もう少しで卒業式だ。 翔吾さんと話せなくなって僕には何も無くなってもう1年がたとうとしていた。 翔吾さんが僕から離れてからの1年はとても長く感じた。 そんなある日携帯がなった。 (卒業式の日会おう) それだけだった。 僕は嬉しくなって飛び跳ねていた。 翔吾さんに会える。 ただそれだけで幸せだった。 〜3月〜 卒業式の日無事僕達は高校を卒業した。 翔は涙で顔がぐちゃぐちゃだった。 ごめん。どう仲直りしたらいいか分からなくて。許してもらえるとは思っていないけどごめん。 羽咲ちゃんはこの日謝ってきてくれた。 それだけで良かった。 僕は羽咲ちゃんを抱きしめていた。 「いっくん!!校門!」 翔の大きな声で振り返った。 校門にはずっと会いたかった翔吾さんがいた。 驚きと嬉しさで足がすくむ。 「苺恋行っておいで」 羽咲ちゃんの声を出発の合図に翔吾さんの元へ走った。 翔吾さんが手を開いて待っている。 僕は翔吾さんの胸の中に飛び込んだ。 大好きだったこの大きな身体。 大きな手、匂い全てで僕は涙が溢れた。 「苺恋。卒業おめでとう。あの日本当は手放したくなかった。でも教師として俺はその選択しかないと思っていた。学校で寂しそうな苺恋を見ていると心が痛くなった。離れた方がいいと思った。けど、俺はやっぱり苺恋が好きだ。俺とこれからずっと一緒にいてください。」 嬉しかった。 幸せだと思った。 僕は翔吾さんのほっぺにちゅーした。 「りりそれで良かったのか?」 「私は別に苺恋が幸せならそれでいい」 我慢している羽咲ちゃんを翔が抱きしめているのを見て少し悲しくなったが今の僕には翔吾さんがいる。 卒業式の後、僕は翔吾さんの家に来ていた。 正しくは一緒に帰ってきた。 「そろそろ泣きやめよ〜」 翔吾さんが僕の涙を拭った。 「だってぇ〜翔吾さんが……」 僕は学校から家までずっと泣いていた。 1年会えなかったはずなのになんだか懐かしいような心がぽかぽかする感じがした。 あぁ、しあわせだな。 「あ、翔吾さんごめんなさい。1回だけ翔としちゃった……」 「俺でも嫉妬はするよ?お仕置だな……」 そう言って翔吾さんの匂いがするベッドに押し倒された。 大好きな大きな手が僕の体をなぞる。 それだけで僕は感じてしまっていた。 ずっとずっと欲しかった。 翔吾さんが欲しかった。 翔吾さんの余裕のない顔が愛おしくて僕は頬を撫でキスをした。 少し恥ずかしそうに顔を隠していた。 もう離れなくていい。 僕達は一緒にいていいんだと思うと幸せだった。

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