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第3話《序章》魔王が目覚める日③
突き飛ばされた体が石の床に投げ出された。
「この悪魔がッ!」
空から椅子が降ってくる。
石に囲まれた硬質の窓から射した、青い空。
蒼天から落ちてくる凶器は、四本の椅子の脚だ。
ガダンッ、ダンッ!
僅か数ミリで椅子が止まった。
風圧が肌を切って……
「手の骨を砕いてやるつもりだったが、やめだ……」
冷酷な目が無慈悲に見下ろす。
「貴様の手コキは気に入っている」
恭しくも冷えた床に跪く。
「右手の骨を砕いてしまっては勿体ない」
右の手の甲をつぅっと指が撫でた。
「そうでしょう。ねぇ、殿下」
男の下でビクリと震える。
バキィッ
男の軍靴が椅子の骨を粉々に踏みつけた。
「なぜ領内に《ガニメデ》がいるのです?」
「なんの……ことだ」
「質問にお答え下さい。《ガニメデ》を潜行させたのは、あなたの仕業ですね」
「知らない」
「とぼけるなッ!」
軍靴に蹴り飛ばされた椅子の破片が頬を掠めた。
「この領内で……いや、世界の半分を領土とする中華大帝国に逆らうのは、あなただけだ」
竜の血を引く末裔・龍族第17皇位継承者
輝夜 皇子
「傾城 の悪魔が……」
唇が下卑た笑みを浮かべた。
「散々閨 で可愛がってやったのに、私に逆らうか」
フッ………
ククククク……
フハハハハハハー!!
「貴様、気でもふれたか」
フラフラと立ち上がった体の底から、笑いが込み上げる。
「可愛がってやったのは俺の方だろう」
フッと息を吐き捨てた。
「毎夜毎夜、お前の垂れ流す醜悪な欲望に付き合ってやったのだ。有難く思え。まさかお前如き雄程度が俺を満足させていたとは、思ってないよな?」
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