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第4話《序章》魔王が目覚める日④
《ガニメデ》
その名とは正反対の醜悪な外見を持つ、六足歩行対攻城戦用戦闘機である。
機動力はないが、両肩に二対装備されているビーム砲は強力だ。
(あれを食らえば難攻不落のアマクサでも、揺らぐぞ)
だが《ガニメデ》が実践に投入された記録はない。
次世代装甲戦闘機《フラッグ》を実用段階まで開発を進めている。
細々と独立を維持する小国では不可能だ。
世界は中華大帝国・烈 と欧州連合が勢力を二分している。烈国植民地領に侵攻してきたという事は……
(欧州連合)
エリア19を本気で取るつもりか。
領地こそ小さいが、エリア19は島国だ。遥か海洋に幾つもの島々が点在している。
島々を繋ぎ領土としていたエリア19は、かつて王が国民を束ねて統治していた時代、海洋王国と呼ばれていた。
国土を遥かに凌ぐ海域が、国を支え繁栄をもたらした。
それに目を付けたのが烈だ。
平和主義の王国に突如侵攻し、国は三日で落ちた。
烈は広大な海域を手中におさめると共に、長年の悲願であった太平洋進出をも成し遂げたのである。
烈が『19』を失えば、太平洋制海権を消失する。『19』は外洋への生命線。烈にとって痛手だ。
(欧州連合が烈の喉笛に噛みつくか)
パンッ
乾いた音が響いた。
体が床に投げ出される。頬がジンジンする。口の中で錆びた味がした。唇が切れたのか。
「思い上がりも甚だしい。誰のお蔭で、あなたは生き長らえているとお思いか」
声が落ちてくる。
「誰のお蔭で、なに不自由ない暮らしができるとお思いか」
(誰のお蔭?)
「この私。エリア19国防長官・ユーゴ シモンのお蔭だろう」
違う。
「国に棄てられた皇子の分際で」
俺が生きているのは……
「殿下のはしたない穴を私の太い竿で掻き回して、毎晩可愛がってやっているというのに。恩を忘れた恥知らずな飼い犬が」
生きる道を、俺自身が選らんだからだ!
「あなたには、躾が必要だ」
腰の警棒に手を掛けた。
「顔は傷つけない。これでも、あなたの顔は気に入っている。痣になった所は、今夜舐めて慈しんでやろう」
カシンッ
指がスイッチを押した。警棒が伸びて、ビリリッと電流が走る。
「少し痛いが我慢してください。これは、身の程をわきまえないあなたへの教育です」
ビリリリッビリリーッ
電流の走る警棒が頭上に振りかざされる。
「どんな声で鳴くのかな?」
下卑た口角が吊り上がった。
「長官!」
「なんだ」
振り下ろされた警棒が、空を切った。
「《ガニメデ》が侵攻してきます。Rf防衛地点を突破。至急対策をお願い致します」
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