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第5話《序章》魔王が目覚める日⑤
ウィンとモニターが回転した。偵察カメラの映像を大画面が映し出す。
「Ry2地点に《ガニメデ》が入ります。3.5地点に到達すると、我が陣に深刻な損害が発生する可能性があります」
ジジッジィィィー
異音を吐き出してモニターが停止した。すぐさま別のカメラに切り替わる。《ガニメデ》の小銃が偵察ドローンを破壊したのだ。
開発途上の機体を実践で動かしている。否、これはもう開発途上ではない。
(完全に仕上げてきている)
六本の下肢を閉じて開いて推力で前進する。足こそ遅いが、機動に不安はない。
(《ガニメデ》は無人操縦だ)
中にパイロットはいない。遠隔操作の《フラッグ》である。
(人命の損傷の危険がないから、強引な手段を使ってでも侵攻してくるぞ)
確実に砦を喰い破ってくる。
アマクサは難攻不落の要塞だが、新型兵器を相手に果たして持ちこたえられるか。
「長官!ご指示を!」
「分かっている」
チィッと舌を打った。
シモンは最早、こちらを見ていない。それどころではなくなったのだ。
「3.5には近づけるな。対空激射砲用意。チャージまで何分だ」
「8分20秒です」
「第1種戦闘配備」
「第1種戦闘配備」
モニターの兵士がシモンの命令を復唱する。
「戦闘車両一軍、防擊用意」
「戦闘車両一軍、防擊用意」
「サキモリ配備」
「サキモリ配備」
「全員出撃」
「しかし、それでは」
(この砦はどうする?)
「アマクサ砦が空になります」
モニターの兵士が血相を変えた。この戦術は砦を裸にする。危険だ。
「精鋭部隊がいれば問題ない」
「ですがっ」
「サキモリは使い捨ての駒だろう」
精鋭部隊とは、本国、中華大帝国・烈の兵士で構成された軍隊。
サキモリとは、この地がまだ独立国であった頃の国民が烈国の支配下となり、強制的に徴兵された兵士の呼称だ。
「減れば徴兵すればよい。いくらでも補充がきくのがサキモリだ」
「はっ」
低く兵士が頷いた。
「サキモリ全員出撃」
シモンの号令を全部隊に伝達する。
「サキモリは盾となれ。三日後、私は本国への帰還が決まっている。こんな所で不始末を起こして、本国への帰還が取り消されでもしたらどうする?辺境砦などに留め置かれてたまるか」
この男、下衆 だ。
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