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第17話《Ⅰ章》傾城の悪魔⑦

(大体いま、あの男が生きているのも、ただの悪運だ)  《ガニメデ》三機が最大出力までチャージせず、レーザー砲を発射していたら、あの《ジェネラル》だってバラバラだ。最新鋭の02-XG3であっても防ぎようがない。  なんの対策も講じずに時間稼ぎができているのだから、あの男の悪運は神がかりな強運だ。 (恐らくは……)  敵司令官が慎重なのだろう。  新型《ジェネラル》のスペックを知らないがために、慎重に戦略を立てざるを得ない。破壊のチャンスを逃せば、一気に流れを持っていかれて窮地に陥る危険がある。 (《ガニメデ》最大の特性は、レーザー砲の比類なき攻撃力だ)  ゆえに、最大チャージまで時間を要するのがウィークポイントでもある。  機動力かない分、チャージ中の敵からの攻撃は《ガニメデ》が最も苦手とするところだ。 (こちらの機体性能を警戒しての安全策か)  ……待て。  02-XG3のスペックを俺は知らない。 だが、相手も知らないんだ。 (使えるぞ!)  ……クッ (まさか起死回生の戦術が……)  あの男の運頼みになろうとはな。 (こんなことになろうとは……)  面白くて笑わずにはいられないじゃないか。  フフ……  自然と唇が吊り上がった。  勝利の方程式は組み上がった。  悪運の強いお前といえど、このままでは生存率は一割を切る。 (しかし)  俺の戦術が加われば、生存率は五割……  つまるところ、五分五分だ。  上出来じゃないか。  ツッ  無線のランプが光った。 「私の指示に従え。必ず生還させてやる」

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