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第3話 雑誌の撮影①

 もう朝か。 太陽の光が、少し開いたカーテンの隙間から射し込む。 ちょうど目に光が射し込み、その眩しさで目が覚めた。 重い体を起こし、洗面台で顔を洗い、そして、朝食にコーヒーを淹れた。  歯を磨きながら、リモコンに手を伸ばした。 「人気アイドルグループ“SOLEIL”がまたも快挙達成です!」 目が痛くなるほどの、眩しい照明を浴びている自分たちが映っていた。 1st・2ndシングル売り上げが第1位。 さらに、その3カ月後に1stアルバム発売。 新人アイドルにしては、異例の早さだ。 そして、何より俺らの名を、世間が知るきっかけになった一番は……。 1stアルバムを引っさげて行われたライブチケットが、わずか1時間で完売。 これは、事務所も俺たち自身も驚いた。 ワイドショーで“SOLEIL”という文字を見ない日はなかった。  全然想像もしていなかった。 結成して3ヶ月。そして、きょう6月30日、デビューして丸2年。 トントン拍子に事が進んでいき、正直怖いと思う時がある。 でも、それと同時に、とてもありがたい事だと常に思っている。 しかし、一部ネット住民は「早すぎるんじゃないか」と、厳しい声も挙がっていた。  淹れたての、湯気がまだたっているコーヒーを飲みながら、ボーッとテレビに映っている自分を観ていると着信音が鳴った。 画面には“桜田マネージャー”の文字。  「あ、純斗? おはよう。あと5分で着くから準備して降りてきて」  わかりました、と短く返事をし、電話を切った。  爽やかな中に、どこか男らしいスパイシーな香りがする香水を、一振りする。 そして、玄関先にある全身鏡の前に立ち、ニコッと笑った。  桜田マネージャーの車がちょうど、マンションの下に着いていた。  「お待たせしました」  桜田マネージャーに挨拶し、車に乗り込んだ。  年の割に童顔だから、学生に見られてもおかしくない。 初めて会った時、35歳と聞いて、かなり驚きを隠せなかった事を思い出す。よく言われるのだろう、苦笑いをしていた。 顔は“綺麗”というより、“可愛らしい”という言葉の方が似合う。 ただ、顔とは裏腹に、性格が幾分クールなため、婚期を逃している。 現在、彼氏募集中だそうだ。 休みがあれば合コンを開いている。 が、なかなか良い出会いがないと嘆いている。 結婚相談所に通おうかと、最近悩んでいるらしい。  そんなことを考えていると、バックミラー越しに目があった。  「今日は雑誌の撮影だから」  「メンバー全員でしたっけ」  そうよ、と相変わらずクールに答えた。  ここ最近、仕事が立て続けに入っていた事もあり、いつの間にか眠ってしまっていた。  「着いたわよ」  だいぶ疲れていたのか、移動時間の30分、爆睡をしていたようだ。 まだ、重い瞼を擦りながら、ゆっくりと車から出た。  「すごくいい天気だな」  空を見上げると、雲一つない青空が広がっていた。 どこか懐かしいようなそんな青空。

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