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第4話 雑誌の撮影②
行き交うスタッフに挨拶をしながら楽屋に入った。
まだ、メンバーは、来ていないようだ。
「お! 俺、もしかして一番乗り?」
「いいえ、音弥が来ているわ。他のメンバーは、別の仕事終わりに来るわ」
音弥、もう来ているのか。相変わらず早いな。
音弥は、クールな性格で、はしゃぐ所や怒る所を見た事がない。
何より、メンバーの中で一番長く一緒にいる。
結成以前から互いをリスペクトし合える関係だ。
ダンスや歌と、いろんな事を一緒に学んできた。
そして何より真面目で、今日みたいに別の仕事が入っていない時は、大体30分前には着いている。
台本を手に音弥が楽屋のドアを開けた。
「おはよう。今日も早いね」
「別の仕事が入っていなかったからな。純斗、何だか眠そうだな」
「ありがたい事に最近さ、めちゃくちゃ忙しいじゃん。やっぱ疲れが溜まっているのかな。ここまで来る間、爆睡してたんだけど」
俺は、伸びをしながら欠伸をした。
「まぁ、ありがたい事ではあるけどね。でも、休める時は休むんだぞ。体壊したら、元の子もないんだからな」
体の事にも気を使ってくれる。昔から変わらない。
クールな上に優しいと来たもんだ。
2月14日。世の女の子達が胸をときめかせるバレンタイデーで、クラス全員からチョコをもらったと、以前インタビューで答えていた。
全て本命らしい。俺が女だったら、惚れてたな。
そんな事を考えていると、音弥が読んでいる雑誌が気になり覗き込んだ。
「ファッション誌しか置いてなかったから読んでいるだけ」
音弥が急に、俺の方を見て言った。
「何でファッション誌、読んでるんだろうって顔してたから」
驚いた表情をしていたのだろう。音弥は俺に、雑誌の表紙を見せた。
昔から不思議だった。音弥は、俺が思っている事をズバズバ当ててくる。
一緒にいた時間が長い分、俺自身も、音弥が何を考えているのか大概わかる。
互いに言葉には発さなくても、思っていることがわかる存在だ。
そばにいて、何でもわかるような。心が通じ合っているような。
まるで、熟年夫婦の様な感覚だ。
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