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第16話 記憶⑤〜永人side〜
目が覚めると、俺は純斗の腕の中にいた。
横を見ると気持ちよさそうに寝ていた。
寝顔が可愛すぎて、ほっぺにキスをした。
無反応。本気で寝てるな。
その顔をしばらくじっと見ていると、純斗が起きた。
俺は、目を瞑り寝たふりをした。
隣で純斗がアタフタして寝癖がついている髪をボサボサになるまで掻きむしっていた。
あ〜、もしかして昨日のこと覚えてないのかな?
純斗の行動を見ているとそんな気がしていた。
実際、覚えていなかった。
どうしても、昨日純斗に気持ちを伝えたかった。
酒の場をチョイスした俺のミスではあったけど、純斗と一緒に居られるあの空間が楽しかった。
昨日は、初めて純斗のことが好きだと気づいた日。
その日に気持ちを伝えるために、俺はもう1週間、いやもっと前からドギマギしていた……のに、純斗のやつベロベロに酔っ払って、覚えてないと。
必死で謝る純斗が、いま言ってと言ってきた。
ふざけるな、俺がどんな思いで言ったのかも知らないくせに、こんな状況の中もう一度言えるわけがない。
それに、バーで告白したことをなんで覚えてないの。
この家に来たのだって、告白した俺に気を使って、落ち着いて話をするために純斗が自分から言ったことじゃん。
その言動も覚えてないのは純斗の様子でわかった。
悲しかった。泣きそうになった。
なんで覚えてないの、と怒りもあったけど、純斗が俺以上に忘れていることに対して悔やんでいる姿を見て、優しい人だなと思った。
やっぱ、この人が好きなんだと改めて思った。
「純斗のことが好きだってこと」
純斗は驚いた顔をしていた。
どう思っているのかもわからない。
ただ、お互い目を離すことなく見つめあっていた。
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