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5.我侭 (1)

 十二月に入ると、街はクリスマス一色に染まった。 街路樹はイルミネーションに彩られて、家族や恋人、友人同士で楽しそうに写真を撮る人々の姿があちこちで見られた。  仕事を終えたケイは、いつも通り、誰も待っていないひとりきりの部屋へ向かって歩いてゆく。  アンリからの連絡に返事を返さなくなってからそろそろ二か月になろうとしていた。  しばらくは、ケイが返事をしなくてもアンリからメッセージが届いていたが、それも一週間が経つと二日置きになり、三週間が経つとその頻度はさらに下がって、今はもう、連絡は来なくなった。  関係を築くのは大変なことなのに、壊すのは簡単だ。  このまま、ケイのほうからアンリに連絡を取らずにいれば、そのうちに縁は完全に切れて、もう二度と会うこともない。  瞳の奥で鈍い痛みを感じたが、ケイはぎゅっとまぶたを閉じて、その痛みをごまかした。

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