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4.キス (9)
目が覚めたのは翌日、日曜日の夜だった。
モトイが何度か来てくれて、薬を飲ませてくれたり汗を拭いてくれていたのを、夢見心地に覚えている。
熱はすっかり下がっているようで、ベッドから起き上がると体が軽かった。
喉がからからだったので、キッチンで水を飲むと、今度は空腹であることに気づいた。
どうせ何も入っていないのだが、冷蔵庫を開けてみる。
すると、買った覚えのないフルーツゼリーとスポーツドリンクが入っていた。
モトイが買って置いていってくれたのかもしれない。
あとでお礼を言わなくては、と思いながら、ケイはとりあえず、ゼリーを食べることにした。
ラグマットの上にぺたんと座り込んで、ゼリーのフタを慎重にあけてから、ひと口食べてみる。
スッキリとした甘みが、つるんと喉をとおって胃に落ちてゆく。
ケイは食べながら、スマートフォンのディスプレイを確認した。
メッセージアプリに通知が表示されている。
モトイから仕事の連絡と、アンリからのメッセージが届いていた。
『体調よくなったら、連絡して』
ケイはそれを既読にしたが、返事は返さなかった。
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