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5.我侭 (5)
どこからともなくクリスマスソングが流れている。
給料をもらった日は、落としたり、変な人に絡まれたりすると怖いので、たいてい真っ直ぐ家に帰っているのだが、その日はなんとなく誰もいない家に帰るのがためらわれて、ケイはファミレスで夕食を食べてから帰ることにした。
ユウが寂しいと言っていたのを聞いたから、感情が当てられてしまったのかもしれない。
――寂しい、の、かな。
ケイはぼんやりと窓の外に視線を向けた。
店内が明るいせいで、大きな窓ガラスは鏡のようにケイ自身の姿を映している。
今ここにあるのは、中身のないただの抜け殻で、寂しいなんていうことを感じる心は、別の安全な場所に、ちゃんと隠してあるはずなのに。
ぼんやりと窓に映る店内の様子を眺めていると、やがて注文した料理が運ばれてきた。
鉄板にのせられたハンバーグからうっすらと白い湯気がたっている。
「ごゆっくりどうぞー」
女性のウェイトスタッフが、そう言いながら伝票を置いていった。
ケイは、小さく「いただきます」を言って手を合わせてから、フォークを手にとった。
味は、よくわからない。
ただ空腹は満ちてゆく。
いつかアンリのことを思い出さない日が来るだろうか、と、思った。
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