38 / 50
5.我侭 (7)
「ケイって、レイに会うの初めてだっけ、」
カズキは回転式のカウンターチェアに座ったままくるりと回ると、ボックス席のほうでドリンクの準備をしている、LUCEの店員らしい人物のほうへ体を向けた。
「レイ、なんか手伝う?」
カズキにレイと呼ばれた店員は、いったん手を止めてカズキとケイが座っているカウンターのほうを見た。
「このあとシキも来るから大丈夫だと思うけど、カウンターは面倒見れないかも」
「おー、平気。こっちは勝手にやる、」
集合時間まであと十分くらいだった。
ケイが着いたときはまだ参加メンバーの半分もいないくらいだったのが、続々と集まってきて、店内が騒々しくなり始めている。
カズキは再びチェアを回して、またケイのほうに体を向き直すと、
「いま、喋ってたの、レイっていうんだけど、胡蝶蘭のホストもやってるんだよ」
ケイは相槌をうつようにうなずいて、ちらりとレイのほうを見た。
作り物のようにきれいな姿をしているのに、独特の色気のある人だった。
耳に聞こえた声音や口調は穏やかで、人見知りするケイでも、不思議と安心する感じだった。
「おとこ、の、ひと、」
ケイの問いかけに、カズキはあはは、と笑いながら、
「うん。男の人。女の人に見えた?」
「わからなかった、」
「わかんないよねー」
よしよしと頭を撫ぜられて、ケイはちょっとうつむいた。
モトイもそうだけれど、なぜだかすぐに頭を撫ぜられる。
ふと、アンリからもよくそうされていたな、と、過去の記憶が蘇って、慌てて思考を止めた。
ともだちにシェアしよう!