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6.心の場所 (4)
二十分くらい経って、バスルームから聞こえていたシャワーの音が途切れた。
モトイはいちど六階にある彼の自室に戻って、アンリの着替えを準備してくれてから、帰ってしまった。
つまりこの後は、ふたりで話さなければいけない。
ケイはそわそわと落ち着かず、緊張と不安のためにどくどくと早くなる鼓動のせいで、既に疲れてしまっていた。
ぜんぶ後回しにして、もう眠ってしまいたい気持ちになる。
程なく、Tシャツをスウェットに着替えたアンリがバスルームから出てきた。
いつもはスタイリング剤でセットされている淡いブラウンの髪が、今は濡れている。
いつもより長めに目もとにかかっている前髪や、白い首筋をつたう水滴が色っぽくて、胸がドキリとする。
ケイは顔が赤くなるのを自覚して、慌ててうつむいた。
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