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第53話 ※
※性描写(しかも無理やり)が入ります。
苦手な方は飛ばしてください。
何一つ届いていなかった。
どれだけ唇を重ねても、肌を重ねても、結局この亜麻色が俺を映すことはなかったんだ。
「ん、んぅ、っ、」
両肩をベッドに押さえつけ、呼吸ごと言葉を奪い取る。歯列を割って舌を侵入させれば、組敷いた身体はびくりと大きく跳ねた。
くぐもった声と共に胸を押され、腕の中でばたばたと抵抗される。けれど、それが本気でない事くらいすぐにわかった。
嫌なら舌を噛み切ればいい。そもそもこいつはアスリートで、力でこられればねじ伏せられるのはこちらの方だ。けれど美鳥は俺の胸を叩き抵抗の意思を示すだけで、俺を傷つけるような事はしない。
それがまた腹立たしかった。
蹂躙していた唇を離し、そこから言葉が漏れる前に今度は指を二本押し込んでやる。奥まで突っ込まれてむせるその顔を、俺はどこか遠くの現実味がない光景として見ていた。
「……嫌なら噛めよ。俺の指噛みちぎって、助けでもなんでも呼べよ。」
びくりと身体を震わせ、抵抗がピタリと止んだ。
涙に滲んだ亜麻色が、絶望に見開かれる。
「んんぅっ、」
体を強ばらせ、なんの抵抗もなくただ首を横に振る美鳥に、俺の内にあるものはどんどん大きくなっていった。
「そうだよな、出来ねぇよな。大好きなsikiの指だもんな。」
亜麻色から涙が一粒こぼれ落ちる。
それでも冷えきったままの心臓はそれをなんとも思わなかった。
意味なんて考えなくてよかったんだ。
馬鹿のつく重度のお人好し。その上相手は心酔しているsikiだ。美鳥が俺に身体を開く理由なんて、その程度で十分なんだ。
いまだに緑が好きだと勝手に思い込まれて、同情されて。そんな理由で身代わりになれるくらいの、こいつにとっては些細な事だったんだ。
「んうっ、ぐっんう、」
挿し入れた指で口内を蹂躙する。
奥まで指を押し込んで、抵抗する舌を押さえつけて歯列の裏をなぞってやれば、美鳥は身体を跳ねさせながら子供のようにいやいやと首を振った。
唾液を絡ませ、わざと音を立てながら明確な意図をもって指を動かす。それでも美鳥は抵抗らしい抵抗を見せなかった。
「んぅっ、んんっ、」
閉じることを許されない口の端からは飲みきれなかった唾液がだらだらとこぼれ、顔は涙でぐちゃぐちゃになっている。
俺の指を嫌だと首を振りながら、それでもされるがまま。
ああ、もうなんでもいい。
どうせ、こいつの目に俺はまともに映ってないんだから。こいつにとっての俺は、好きな女の代わりに同じ名前の男を抱くような最低の男だ。それでも同情で抱かれてくれるっていうなら好きにするだけだ。
俺は美鳥の肩を押さえつけ、口内を犯しながら、その下肢に膝を押し付けてやる。
「ん゛っ、んんっ!」
細い身体が一際大きく跳ねるのを、押さえつける。
一瞬押し込んでいた指につきりと痛みを感じたが、俺が顔をしかめれば、はっ、と目を見開き美鳥はすぐに歯を立て噛みしめていた口元をゆるめた。
ここまでされて、それでも自分より俺の指を気づかうのかよ。自分はどうなってもいいのかよ。
……だったら望むようにしてやるだけだ。
ジャージに手をかけ下着ごと一気にずり下ろし、露になったそこに触れる。
「んっ!ぐっんぅっ、」
騒ぐ口には指を深く押し入れ、バタつく脚は体重をかけて膝で押さえ込んだ。
「んんっ、ん、」
言葉にならない呻き声を聞きながら、起立をしごき無理やりに快楽を引きずり出していく。
どれだけ嫌だと首を振ろうとも、泣こうとも、こんなもの生理現象だ。幾度か擦り上げてやれば、そこは簡単に身を起こし硬度を増していく。
「んぅ、ん!んふ、っ、」
抵抗に捩っていた身体が別の意図を持ってびくびくと跳ねはじめ、口から漏れる声が高く変わって。嫌だとその手は弱々しく俺の胸を叩くのに、吐息は熱を帯び俺の指に絡みついてくる。
こんな状況なのに、俺の身体は次第に興奮に熱を帯び始めていた。
「ん、んぅっ、ん゛んんっ!」
心と身体が噛み合わないまま、美鳥はあっけなく射精した。
何度か身体を痙攣させて俺の手に白濁を吐き出し、くたりと脱力する。
涙でぐちゃぐちゃになりすぎて焦点があっているのかも分からない顔を覗き込み、俺はようやくその口元から指を引き抜いた。
嗚咽とともに漏れる荒い吐息が室内に響くのを聞きながら、俺はほとんど無意識に自らのベルトに手を伸ばす。
正直この先の記憶は曖昧で、自分が何をしたのかよく覚えていない。
手に絡みついた白濁を窄みに塗りつけ内壁を押し広げ、気がつけば自らの昂りをそこに押しつけていた。
警鐘のように響く悲鳴に近い矯正。それをどこか遠くに聴きながら、俺は美鳥の身体を犯した。
何も考えられなかった。
ただ本能的に目の前のこいつが欲しいと腰を振る。何でこんなことをしているのか、感情が追いつかないまま何度も何度も身体をうちつけた。
その狭さに息を詰めながらそれでも無理やり押し入って、己の内にあったドロドロとした醜い感情をぶつける。
悲鳴に近い声がずっと聞こえていた気がするが、そんな事どうでもよかった。
だってもう、これから先こいつが俺を見ることはない。きっともう、触れることすら出来なくなる。
だから最後に、どんな形でもいい、こいつの事が欲しかったんだ。
ああ。俺、こんなにもこいつの事が好きだったんだな。
ストンと胸に落ちた感情は、行き場なんて今更どこにもなくて。
俺は内にあった全てを、白濁と共に美鳥の最奥に注ぎ込んだ。
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