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第60話

帰国後。 十哉の編集作業を経て、碧唯の写真集は発売された。 その間、碧唯はたまに一機のブログに顔を出したりしながらaoiになりきる為に手話を勉強し始めていて、日本語と英語の手話の違いを調べる事に楽しさを見出していた。 写真集は3人の知名度と完成度の高さ、そして碧唯の演技もあって、ベストセラーになっていた。 「かんぱーい!!」 今日はそのお祝いに、4人で高級ホテルのディナーを食べに来ていた。 「まぁ、売れないワケないと思ってたけどな、俺は。子ブタくん頑張ってたし」 「向こう行ってからまた上手くなったわよね、表情の出し方とか」 「そ……そんな事……ないです……」 「子豚ちゃん、自信持っていいんですよ。あぁでも、そんな謙虚さも子豚ちゃんの魅力ですよね」 「ご主人様……」 隣に座っている威が笑顔で頭を撫でてくれる。 恋人同士になれて、毎日お仕事をする中で碧唯は威に一層惹かれていた。 「豚、幸せホルモン出しすぎ」 ずっとその笑顔に見惚れていると、一機からこうからかわれる。 「良いんです。子豚ちゃんが幸せなら僕も幸せですから」 「……アンタもね、タケル。今の言葉、全然話つながってないわよ」 「いいじゃねーか、子ブタくん、手話も頑張ってるし、来た時よりずっとイキイキしてるじゃん」 「まぁ、そうね。ワタシたちの事も家族だって思い始めてくれてるわよね。すごく嬉しいわ」 3人が優しい笑みを浮かべている。 それを見ていたら、碧唯も自然に笑顔になった。 「皆さんのお陰です。ボク、毎日がとても楽しくて充実しています。だからボクも皆さんの役に立ちたいです!」 「おっ、言ってくれるじゃねーか」 「ヤダっ、泣かせないでよ、豚のクセに」 お酒も入っているからか、ふたりは目を潤ませる。 「タケル、金入ってきたら子ブタくんに欲しいもの買ってやろうな」 「勿論です。子豚ちゃん、何がいいですか?」 「え、えっと……」 碧唯の心に、ひとつだけ浮かんだものがあった。 「ボク、ご主人様に似合う指輪が欲しいです。ボクもこの指輪、すごく大好きだからご主人様にも素敵な指輪をつけてもらえたらいいなぁって……」 「…………」 指輪に視線を落とし、頬を紅く染めながら話す碧唯。 そんな碧唯を見て、一機と十哉はニヤニヤしながら威を見た。 「……なら、君とお揃いの指輪を新しく作りましょう。君がaoiちゃんの時はしないという約束を守ってくれたらの話ですが」 そんなふたりに目もくれず、碧唯だけを見て嬉しそうな顔をして話す威。 「は、はいっ!!ボク、ちゃんと守ります!!」 碧唯は嬉しくて胸がいっぱいになり、その大きな瞳を輝かせていた。 「うんうん、子豚ちゃんは良い子なので大丈夫だと信じていますが、確認したくなってしまったので聞いてしまいました」 「ハイハイ、ただ豚に言われた事が嬉しくてノロケたかったのはよく分かったわ。タケル、良かったわね」 「ようやくって感じだよな。子ブタくん、これからもタケルの事、よろしく頼むよ」 威のノロケを微笑ましそうな顔で見ていた一機と十哉が話してくれた言葉は、碧唯にとってとても嬉しいものだった。 「はいっ!!ご主人様にいつも幸せって思って頂けるように頑張ります!!」 愛する威の為に。 碧唯はこれからも威だけのペットとして威に尽くしていこうと誓った。

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