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第14話 またの約束をしよう
寒い冬の中、久しぶりの晴れた日だった。
寒いからとおそろいのダウンを買って、おそろいのルアーにおそろいのPONキーホルダーまでつけて二人で釣りに来ていた。
昼すぎに来た釣りは全然、釣れる気がしない。
それでも、智と話しながらだと、楽しい。
「なんか釣りってぶっちゃけひまじゃん?」
「まぁ確かに」
もう釣れずに5時間は立っただろうか。
「最初に釣りしてた仲間はみんな思ったより楽しくないってやめちゃったんだよ。彼女もにおいが嫌だってこないしさ、俺の友達っていつも騒いでないとしぬってやつばっかりで、そういうのも楽しいけど、疲れるじゃん」
遠くで陽が沈んでいく。太陽の光を海が反射してキラキラして見えるのは冬の空気が澄んでるからか、好きな人がそばにいるからか。
「でも、俺、釣りが好きで、というか、こういう落ち着いた時間みたいなのが好きで、ただいっしょにすごせるやつがいたらいいのにってずっと思ってたんだ。そんでだれかそんな人がいたはずなのにって過去を振り返った時に陽太がいたんだ」
智は僕を見ている。昔のような明るい笑顔で。
「陽太がいたらいいのに、また会いたいって思ってたら陽太に会えたんだよ」
いつだってかわらない素直な言葉だ。
「だから、会えた時、すぐに次の約束を取り付けた。昔みたいに。昔も、またって、言ったら、優しい陽太ならことわれないと思ってたから」
「優しいとかじゃなかったんだけど、でも、これからも約束しよ」
またの約束をしよう。今度はお互いに相手とまったく同じ気持ちで。そしたら約束も昔よりずっと幸せな約束になるはずだ。
終わり
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