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借り 2

 「何するんだ!」  あの人が怒鳴った。  スーツの顔色が変わる。  立ち上がる。  腰が落ち、どの方向にでも動けるように踵が浮いていた。  無意識にどのような事態にでも対応しようとしているのだ。  まあ、この人は今は国が管理する多量殺戮兵器だからな。  でも僕の前では、ただの僕の恋人だ。  「・・・貸し借りってことは何かして貰ったわけだろ?それを返すだけなのに、恩着せがましくするのはおかしいだろ!!」  僕は怒った。  この辺は間違えたらダメだ。 ちゃんと教えないと!!  「・・・そうか?そうなのか?・・・確かに犬は何も言わないでしてくれたから、そうするべきか・・・」   あの人が考えこむ。  何かあの人なりに納得するところがあったらしい。  この人は人を殺したり傷つけたりしてはいけないと言っても、全く納得しないが、自分が納得いくところではそれなりに折り合いをつけようとはしてくれるようになった。  このあたりはすごい素直だ。  もう、ゴミのポイ捨てもしなくなったし、人前でセックスするのはやめてくれるようになった。  「・・・はい、やり直し!!」  俺はあの人に言う。  あの人はぶつぶつなにか言っていたが、顔をあげてスーツにきちんと身体を向けた。  前から思っていたのだが、この人やろうと思えばものすごい礼儀正しい仕草も、綺麗な所作もできて、育ちの良さそうな雰囲気さえ出す。  どういう育ち方をしたのかとかは全く教えてくれないと言うか、「忘れた」としか言わないのだけど、この前ふざけてだけど俺を相手にワルツまで踊ってみせたのはびっくりした。  この人は相当上級の礼儀作法がたたき込まれているのだ。  伸びた背筋、きちんと向けられた身体、揃えられた膝。  綺麗な男が綺麗な仕草で、丁寧にスーツに聞いた。  「話を聞こう」  声さえ綺麗だった。  カッコイイ。  「あんたやればできるし、カッコイイよ!!」  俺は褒めた。  誉めて伸ばす!!  「そうか。僕はカッコイイか」  あの人はご機嫌だ。   ニコニコ笑う。  スーツだけがポカンとしていた。  こんな丁寧な態度など、とられたことはないのだろう。  とにかく、俺達はスーツの話を聞くことになった。  スーツの話の前に説明しなければいけない。  俺は17才になる。  去年、この人と出会うまではちょっとだけグレた高校生だった。  人が死んだり殺されたりするのが当たり前になってしまった今では、何でそれくらいでグレたかなって思うのだけど、とっても将来を期待された陸上選手だったのだけど、膝を壊して選手生命をたたれてヤケになっていたのだ。  そんな俺は、殺人現場で殺した死体を犯していたこの人と出くわしてしまった。  そして、この人の不思議な能力も知ってしまった。   右手が武器に変わる能力だ。  見てしまった以上、殺されるはずだったのだけど、その時、この人の気まぐれが作動した。  俺はこの人に選択を迫られた。  「セックス専用の穴になるか、それとも死ぬか」と。  俺はこの人のセックス用の穴になることを選んだ。  わりと簡単に。  殺されたくなかったのはある。  それ以上に・・・俺は一目見た時からこの人としたかった。  この人が要求するように抱かれるのではなく・・・俺がこの人のケツにぶち込んでやりたくてたまらないと思ってしまったのだ。   だって、俺の理想そのままだったんだ。   死体を犯していた変態だったけど。  その外見は本当に・・・冷笑が似合う、研ぎ澄まされて危険で綺麗な外見は俺の好みそのままだった。  年上、25才位なんも全部。  「生きていたら抱けるチャンスがあるかもよ」みたいなあの人のセールストークで簡単に屈した。  無理目の男に欲情するという俺の性癖が暴走した。  絶対に抱かせてくれないような、この男を組み敷いてその中に入りたい。  それは血を吐くような欲求だった。  だから肌を合わせていれば、いつか抱けるかもとか色々考えてしまったんだ。  まあ、そのまま殺人現場でとことん抱かれて、俺は雌にされてしまったんだけど。  ガンガン毎日のようにやられて、もうすっかり後ろの穴を開発されてしまってるんだけど。  ・・・でも、僕は初志を失うことはなく、毎日毎日この人を抱く機会を狙っている。  頑張り続けて、いつしか穴から恋人にまで昇格し、今ではたまには身体を好きにさわらせてもらったり、いわゆる素股くらいはさせてもらえるようになりました。  後少し!!  俺はあの人を抱くという初志を貫くつもりだ。  ただ、俺があの人に抱かれたことは俺の身体を変えてしまったのだ。  性的な意味以外でも。        

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