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借り3

 この人の事前説明は不十分だった。  「殺されるか、セックス専用の穴になるか」   それしか僕には説明しなかった。   正しい説明をする必要はあったと今なら思う。   「殺されるか、不死身の生き物になってセックス専用の穴になるか」とあの人は言うべきだったのだ。  もっと言うなら、   「殺されるか、不死身の身体になって、化け物のセックス専用の穴になるか」  ここまで正解な説明をしても良かったと思う。  あの人が人間てはないことは薄々わかっていたけれど。  右手が刀や銃に変わるのは、特撮ヒーローか、化け物だけだ。  そして、あの人は化け物だった。  ある日突然、世界のあちこちで化け物に変異する人間達が現れた。  彼らは能力も特徴も様々で、共通しているのは「殺人衝動」。  人を殺さずにはいられない生き物となり、人間を虐殺し始めたのだ。  大抵は理性を失い、変化したその日から人間を虐殺し続ける。  彼らは「捕食者」と名付けられた。  捕食者達の共通点はふたつだけ。  「殺人衝動」そして「不死身」であること。   捕食者は死なない。  肉の一片になろうと再生する。  それぞれがもつれ特殊能力に、共通点はない。  暴れまわる捕食者を始末するために、政府は初期の頃は永遠に灰にし続けるという方法をとっていたらしい。  多量の火器を使い、捕食者を燃やし尽くし、その灰を回収、再生しそうになったら燃やすことをしていたそうだ。  だだ、これはコストも手間もかかり、一人の捕食者のために爆発物を多量に使い辺りを破壊し尽くすことになるため、政府は新たな方法を考えた。  捕食者を殺せるのは捕食者であることに気付いたのだ。  捕食者達に仲間意識などない。  だだ彼らはひたすら人間を殺す存在だ。  食事も眠りも必要とせず、人間を殺すことだけを楽しみ、理性もない。  だが、稀に理性を残す捕食者達がいる。  人間であった頃にすでに殺人衝動を抱えていたような捕食者だ。  彼らは捕食者になっても理性を保ち、表向きは人間のまま、人間をこっそりと殺し続けた。  この人もそういう捕食者の一人だった。  この人はプロの始末屋だった。   裏で金で人を殺す仕事だ。  そして、プライベートでも殺人癖を持っていて、セックスと殺人を同じモノとして扱う殺人鬼だった。  ただ、セックス自体は楽しくしたい派なので、ギャアギャア泣かれると醒めちゃうとのことで、  殺す相手とのセックスは死んだばかりの身体で楽しむと言う筋金いりのド変態だった。  この人は捕食者になってからも、何一つ変わらず、仕事で殺し、プライベートで殺すことをペースを変えずに行い続けた。  政府はこの人をスカウトした。  多額の報酬と、週に一度の殺人を見逃すことを条件に。    適任だった。  狡猾で、手段を選ばない殺しのプロフェッショナルは、捕食者達相手にもその手腕を発揮した。      この人の右手を変化させた銃は撃ったものをこの世界から消し去る。  どこへ消えてしまうのかは分からないけれど消えてしまうのだ。  一度に消せる範囲は限られてはいるが、捕食者達もこの人に撃たれたならば、消された場所は再生出来ないのだ。  つまり、大体三回撃たれたら、捕食者達は消え去る。  ・・・殺せるのだ。      この人の能力は捕食者達の中では弱い。   だが、とにかく狡猾でとにかく卑怯なこの人は、捕食者達を葬り去っていった。   これでこの人は、人類を捕食者達から守る正義の味方なのだ。  一応。    そして、週の一度のインターバルで楽しむ趣味の殺人も、法で裁けないような悪党を殺すことにしてくれている。  これは俺のために。  俺が少しでもこの人が人を殺すことに耐えられるように。  悪党だったら、残酷に殺して楽しんでても、俺が苦しまないだろうという・・・あの人なりのおもいやりなのだ。  ・・・あの人は楽しみながら人を殺すことはやめられないし、残酷に殺した後でセックスすることもやめられないから。  捕食者達を狡猾に狩り、週に一度は悪者をいたぶり殺し、その後俺を存分に犯す。  毎夜のセックスは殺人とセットのものとは別腹らしい。  でも、この人は・・・この人なりに、正義の味方なのだ。  俺のだけのために。      

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