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保健室の王様
イギリスを飛び立ち、日本について早、一週間。
ある程度、引っ越しの荷ほどきも落ち着き、ようやく今日が初登校。
もともと母親が日本人とのハーフと言うことや、イギリスで日本人の幼馴染みがいたことがあり、言葉には困らないとは思うけど、やっぱり少し緊張する。
「じゃあ、入ろうか」
そんなことはオレの背中を気持ちごと押してくれるように担任に背中をぽんと叩かれ、教室のドアが開かれた。
「はーい。みんな静かに。もう噂で聞いているとは思うけど、転校生を紹介します」
すたすたと教卓に進む担任に次いで入ると、ざわざわしていた教室はよりっそう騒がしくなった。
アメリカ人?とか。ハーフ?とか。女?とか、失礼な声まで。男子校なんだからありえないだろ。
短く一度深呼吸して、顔をあげた。
「はじめましてー。Recherll Anjewel(リチェール・アンジェリー)です。イギリス人とのクォーターで、日本の血もちょっと入ってます。まだまだ難しい日本語とかよくわからないけど、教えてくれると嬉しいです。よろしくね」
そんな感情は一切見せずへらりと笑って、簡単に挨拶をした。
「はい。じゃあ、らつぇ……りちゃ……りつぇーら君の席は………」
何度も噛む担任の姿にクラスに笑いが起きる。
オレの名前って日本人には発音難しいのかな?
「あはは。ややこしくてすみません。ルリって呼んでください。向こうでも親しい人はそう呼ぶんでー」
そう言うと、担任はごめんねーと笑い、頭をかいた。
「えーと、じゃあ、ルリ君の席はあそこ。一番後ろの空いてるところだから。佐久本って子の隣ね。わからないことはあの子に聞いて」
担任に指で指された先を目でおうと、懐かしい顔が手を振っていた。
「せんせー、いきなりすみません。ちょっと頭がいたくて。少し保健室で休んでもいいですか?」
「あらら。なれない日本の生活や緊張で疲れちゃったかな。佐久本君、保健室教えてあげて」
申し訳なさそうに笑顔を作ると、簡単に騙されてくれて、案の定隣の席の彼を指名した。
「ごめんね。佐久本くん」
にこっと、笑うと相手も含みのある笑いを返してくれた。
「いーえ。じゃあ行こうか?」
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