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妬み

リチェールside 累くんを逃がしたというのに、この男子生徒四人は焦った様子もなく、にやにやと近付いてきた。 「なにあんたら。キモいんだけど」 オレは喧嘩はそこそこ弱くないと思う。 でも、決して強くはない。普通だ、普通。 だから、マンツーマンならまだしも、さすがに四人相手に勝ち目なんてないだろう。 ぼこぼこにされるのかなぁ。いやだなぁ。 やられっぱなしなのはもっといやだけど。   それでも、累君が人を呼んできてくれる間での間なら、なんとか持ちこたえられると思う。 「もしかしてさ?折山が人を呼んできてくれるとか、思ってる?」 「ぶはっ!無理だって!だって俺らとあいつ共犯だもん」 四人がよりいっそう笑い出す。 共犯? そんなわけないだろ。過呼吸まで起こしてたし。 「とりあえず、サボり姫ちゃん。俺らと楽しもうよ」 延びてきた手を振り払うと、別のやつに後ろから羽絞めされる。 それを利用して、地面を蹴りあげて前のやつの顎を蹴っ飛ばした。 「ぐぁっ」 「はぁ!?」 驚いて後ろの奴が手を離し、解放された手でそのまま振り返り様に左頬に拳を叩き込んだ。 「てんめぇ!!!」 「おいコイツ早く押さえろ!!」 血走った目に睨みつけられ、オレも拳を握り直し身構える。 最初は呆気に取られていた二人もハッとしたように囲んできて、そこから先はもう大乱闘。 __________ 「暴れやがってこのクソチビ……っ!」 2人がかりで床に押さえ込まれ、目の前の男が苛立ったように顔を蹴られる。 全身痛くて、腹立つけど、目の前の男達も割とボコボコで我ながらよくやったと思う。 コイツら弱そうなやつ目つけて粋がってるだけで喧嘩とか普通に弱い連中だったな、と鼻で笑ってしまう。 だいぶ経ったし、累くんはもう逃げれただろう。 「おい、あんま顔蹴るなって。萎えるじゃん」 はぁはぁと息を切らせて、オレを押さえ込む1人がネクタイで手を縛ってろうとしてくる。 萎えるってどう言う意味だろう。 「服脱がす前に手ぇ縛んなよ。脱がしにくいだろ」 「いやコイツ少しでも手で緩めたらまた暴れるって。服なんて上は適当に破けばいいだろ」 不穏な会話に思わず舌打ちしそうになる。 全裸の写真でも撮られて、この先金とか巻き上げようとしてくるのか。 意地でも絶対渡さないからな。 手を痛いほどのキツさで縛り上げられ、シャツを乱暴に破かれた。 「ははっ、多少傷モノにしちゃったけど、やっぱコイツ顔いいな。縛られてんの興奮するわ」 くいっと顎を持ち上げられ、至近距離にきた顔に腹が立って睨みつける。 「そーゆー顔できるのも、今のうちだからな。おい、あれ飲ませようぜ」 一人が後ろに回り込みオレの髪をつかんで上を向かせる。 なに?と思っていると、目の前のやつが何か、液状のものを手にしていた。 そんな得体の知れないものを飲まされるの?冗談じゃない。 「指、噛み千切られたいの?」 皮肉を込めて笑うと、相手も「おー、こわ」と気にした様子もなく笑う。 1人がかちゃかちゃと自分のベルトを外そうとしてるところが目に入り、まさか、と思った。 「気持ち悪いな。あんたらの性癖どうなってんの」 殴られるぐらいならどんなによかったんだろう。

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