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妬み
「着替え終わって、累くん探しに来たら、こんな普段使わないとこから話し声が聞こえるから、まさかと思ったけど。ほんとどうなってんのこの学校」
ルリ君は臆する様子はなく、怖い表情のまま部屋に入ってきた。
「手、離せよ」
普段の暖かいルリ君からは想像もつかない冷たい声。
「お前、鍵閉めなかったのかよ」
「あー、わるい。お前が閉めたと思ってた」
へらへらと四人が小突き合っている。
だめだよ、ルリ君、逃げて。
こいつらは悪魔だ。
そう言いたいのに、呼吸が苦しくて、声がでない。
「あー、人呼ぼうと思っても無駄だよ?もうほとんどの部活も終わって、校内には誰も残ってないし」
「……………」
ルリ君はその言葉を無視して、つかつかと僕のところに来て、僕の肩をだいた。
「る、………っは……っはぁ……だめ………はぁっ………に、げ………っ」
「累君、大丈夫だから落ち着いて」
そして、こんな状況だというのに穏やかに微笑んだ。
そのまま次の瞬間には僕をドアの方に思い切り押し出した。
咄嗟のことで、ドア側に立っていた二人を後ろに倒れこむ。
ビックリして見上げると、他の四人も驚いたように固まっていた。
「オレ、喧嘩強いから大丈夫。逃げて」
言葉と同時にルリ君は二人の横顔に回し蹴りをした。
突然のことに動けない四人から僕を庇うように立ち、ドアから僕をさらに押し出した。
「る………っ」
勢いよくドアを閉められ、鍵をかけられる。
きっと鍵をかけたのはルリ君。
「はやく、にげて!」
その声に、僕はたまらずその場から駆け出してしまった。
それでも、過呼吸でまともに走ることもできず、ふらふらと壁に手をついてなんとか進む。
「っはぁ……はっ………は……っは……」
早く逃げなきゃあいつらが追いついてしまうかもしれない。
そう思うのに苦しくて、全然進めない。
意識が朦朧としてきた。
もしかしたら、あいつらは初めからルリ君が狙いだから追いかけてこないかもしれない。
何より、昔僕がしたことを知ってるから、僕が誰かを呼べないのを知っている。
ああ、僕は、最低だ。
こんな状況で、誰かを呼べば昔のことまで明るみになるんじゃないか、とかそんなことを考えてしまう。
僕の身代わりになってくれたルリ君のために、だれかを呼ぶことも、もう一度あの場に戻ることもできない。
「はぁっ………っく…………うぅ………っ」
涙が溢れた。
保健室までなんとか辿り着くと、先生が「大丈夫か?」と心配そうに駆け寄ってくる。
「せ…………っはぁ…………せん、せ………はっ…はぁ」
「喋るな。とりあえず落ち着け」
袋を口に当てられ、ずるい僕は、さっきのことを言えないのは過呼吸のせいだと、先生にすがるように抱きついた。
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