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第1話

体が勝手に動いた。 人気のない夜の寂れた公園。 その手前の信号もない横断歩道を渡ろうとした時、少し前を歩く男の人に向かってありえない速度の車が近付いていき、頭で考えるよりも先に、咄嗟に突き飛ばしていた。 その次の瞬間、全身の骨に直接響くような衝撃。 もしかしたら1秒や2秒くらいだったのかもしれないけれど、まるで空を飛んでるような浮遊感に、死んで魂が今抜けたんじゃないかなんて馬鹿げたことを考える。 そんな夢を覚ますかのように地面に打ち付けられる衝撃。 あ、でも、痛みはない。 ………よかった。 死んだよね。今度こそ、ちゃんと。 どうやって死のうかなって思ってたんだ。 痛いのは嫌だなぁって思ってたし。 「おい!大丈夫!?すぐ救急車呼ぶから!」 何を言ってるのかよく聞き取れないけど、早口で何か焦ってるように聞こえる。 意識がぼんやりしていてよくわからない。 ふ、と思わず笑ってしまう。 いや、だってさ。 最後の最後。 死ぬ間際に僕を気にかけてくれる声が聞こえるなんて。 そんなの一生ないと思ってたから。 すごいじゃん。こんなの、むしろ幸運だ。 せめて、僕の人生の最後に幸福を届けてくれた恩人の顔くらい見て死にたいって思ってどうにか目をこじ開けた。 それは、ひょっとすると神様なんてものが迎えにきたんじゃないかって思うほどの耽美な顔。 やっと死ねる。 ありがとう神様。でも、どうかもう2度と僕をこの世に産み落とさないでね。 そこから先は、真っ白。

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