17 / 349
第17話 舞い降りた恋7
『智也なら……いいよ』
智也の頭の中には、ちょっと恥ずかしそうに目を逸らして、可愛く呟く祥悟の顔が浮かんでいる。
……実際の祥悟は、智也の反応そっちのけで、目の前のパフェに夢中になっているのだが。
(……いいよって何がだ?
智也なら……の後の間はなんだよ?
いやいや、落ち着け、俺。
兄貴になってやるって言っただけだろ。
静まれって、心臓)
智也はまた舞い上がりそうになる自分に必死に言い聞かせて、そっと深呼吸した。
「いろいろ、話したいことって何だい?」
「ん?」
いつの間にかパフェを完食した祥悟が、口の周りを舌でぺろんとしながら振り返った。目が合ってどきっとする智也に、祥悟はにやりとして
「智也ってさ、童貞じゃないんだよね?」
「っ」
智也は、気を落ち着かせようと口に含んだコーヒーを、思わず噴きそうになった。
「さっきのキス、すごかったもんな。あーゆーの、いっつも女としてるわけ?」
興味津々に聞いてくる祥悟と、目が合わせられない。
(……いろいろ話したいって…そっち方面か)
「初めてエッチしたのって幾つの時?ってか、智也ってさ、今、カノジョいんの?」
2人が座ったのは、ソファータイプの椅子だから、間に仕切りがない。祥悟は智也の困惑などお構い無しで、ぐいぐいと身を寄せてくる。
(……こらこらこら。密着するなって。ここ、喫茶室だよ。人の目があるだろ?)
「なあ、教えて?俺さ、意外だったんだよね。キス、ちょっと上手すぎ。智也ってストイックな感じでさ、そーゆーの慣れてそうにないイメージじゃん?」
「ストップ。祥悟くん、ここ、どこだか忘れてる?声、大きいよ。そういう話、こんな所でしないよ」
声が上ずりそうになる。
(……頼むからぴったりくっついてくるの、止めてくれる?)
祥悟はちぇっとつまらなそうに舌打ちすると
「じゃあさ、どっか場所変えようよ。智也の方も撮影終わってんだろ?あ。今日ってこの後、まだ予定あんの?」
(……この後?え。場所変えるって……どこに?)
「いや。別にないけど。でも祥悟くん、君、家に帰らなくていいのかい?」
途端に祥悟はしかめっ面になった。
「えー。家なんか帰んねえし。折角のフリータイムだよ?どっか遊び行きたいじゃん」
ともだちにシェアしよう!