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第51話 波にも磯にもつかぬ恋22

後始末をして、トイレから出る。 部屋に祥悟はまだ戻っていない。 智也はほっとして脱衣場に行くと、さっき脱ぎ捨てた服を素早く身につけた。 鏡を覗き込んで、泣いてしまった目元の名残りを、急いで顔を洗って消していく。 浴室からは、何やら楽しそうな祥悟の鼻歌が微かに聴こえてきた。 思わず、頬がゆるむ。 部屋に戻って時計を確認すると、チェックインしてからもう1時間以上経過していた。 休憩Timeは2時間で1さらに5分毎延長も可能だ。でも、祥悟は外泊禁止で門限があると言っていた。2時間で20時を少し過ぎるから、延長はしない方がいいだろう。 (……祥が風呂から出たら、ソファーに座って少し話して……時間になったら家に車で送っていくか) そんなことを考えていたら、ドアが勢いよく開いた。 腰にタオルを巻いた祥悟が、濡れた髪をタオルでゴシゴシしながら、こちらに歩いてくる。 祥悟は、ソファーに座る智也を濡れた髪の毛越しにじっと見おろして 「は‍? おまえ、なんで服、着てんのさ」 「え?」 「え? じゃねーし。続き、しねえのかよ?」 「……続き、……って」 祥悟は垂れてくる前髪をぐいっとかきあげて、不機嫌そうに智也を睨みつけ 「とぼけてんなよ。おまえ、まずは服脱がせて、一緒にシャワー浴びるとこから教えるって言ったじゃん。また服着てどーすんだよ?」 (……え。そ……そうなんだ‍? まだ続き……するの?) 「あ……でも、時間あんまり、ないよ。今19時半過ぎてるし。祥、門限あるって……」 「今日は橘のおっさん、神戸に出張だから帰って来ねえもん。里沙にはお前ん家行くって言ってあるからさ。このまま朝まででも、俺は全然平気だけど?」 (……っ……。えーーー‍?!) 智也は思わず仰け反った。 (……そんなこと、聞いてないよ……。いや、それならそうと、先に言ってよ) 「と……泊まるの‍? ここに‍?」 祥悟はけろっとした顔で、また髪の毛をごしごし拭きながら 「あー。金足りねえなら、俺出すし? つか、ここって泊まりは出来ねえの‍?」 (……いや。いやいやいや。そういう問題じゃ、なくてさ……) 「お金は、大丈夫。あ、泊まりも、もちろん出来るよ、ホテルだし。でも……でもね、祥」 智也の困惑をよそに、祥悟はにぃ~っと笑って 「朝帰りとかさ、俺、したことねーの。なんかわくわくするよね。初体験って感じ」 (……いや。初体験……って。ちょ……ちょっと、待って) 祥悟はタオルを椅子の背もたれにひょいっと掛けると、すたすたとベッドに向かい、ぽすんっと布団に身を投げ出した。 「お~。これ、ふかふかじゃん。ベッド、デカイよな。ダブルか‍な? 寝心地よさそう♪」

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