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第50話 波にも磯にもつかぬ恋21
浴室を出て脱衣場で身体を拭いてすぐ、智也は真っ直ぐにトイレに向かった。
個室に入ると、ほぉ……っと吐息を漏らし、完全に勃起してしまった自分のペニスを握り締める。
好きな人がすぐそばにいて、しかも一緒にラブホに来ていて、独りでトイレでこれを処理するのは、なんともせつない。
でも、祥悟が自分に許してくれた行為の数々に、正直、感謝の気持ちしかない。
(……可愛かった……。綺麗だった。すごく色っぽかった)
ああ。本当に愛しくて堪らない。
あの子が好きだ。大好きだ。
俺の初恋。憧れの人。
自分の手で扱きながら、智也は鼻の奥がツンと痛くなってきて、思わずぎゅっと目を瞑った。泣くつもりなんかなかったのに、目の端から涙がつーっと零れ落ちる。
目蓋に浮かぶのは、大好きな少年の笑顔。
悪戯っぽく笑う顔も、きょとんとした顔も、拗ねた顔も、どの顔も愛おしい。
「祥……。祥……。祥……」
大切な人の名を、何度も小声で呼んでみる。
こんなにも人を好きになれるなんて、思わなかった。人を恋することが、こんなにも嬉しくて幸せで、苦しいってこと、全然知らなかった。
重ねた唇の感触。
甘やかな吐息。
目元をうっすら染めた可愛らしい表情。
華奢な身体。
白くて滑らかな肌。
つんと突き出した胸の尖り。
綺麗な形のお尻。
うっかり見えてしまった、彼の男の子の証。
智也は手の動きを速めた。シャワーを浴びて出てきた祥悟が、部屋に自分がいないことを不審に思うかもしれない。
自然におさまるのを待っても良かったのだが、こんな状態でこれ以上彼と一緒にいたら、彼の望まないことを仕掛けてしまいそうで自分が怖い。
大好きだからこそ、傷つけたくない。
恋しい気持ちが叶わなくても、傍にいられるだけでいい。
頼れる何でも話せる兄貴として、出来ればずっと、彼がほっと出来る場所でありたい。
それだけで充分に、自分は幸せなんだから。
「……っく」
昂りが手の中で弾けて、白い飛沫がトイレの中に散った。
智也はしばらくはぁはぁと息を弾ませながら、高まりがおさまっていくのを待った。
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