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第149話 見えない糸1

「それで? 結局、何が言いたいの?」 昔から、智也はこの叔母が苦手だった。父の1番下の妹だが、強烈なオーラを纏った人で、相手が誰であろうと自分の思っていることをズバズバと口にするし、瑞希も嘆いていたが、基本、人の話はちゃんと聞かない。 「ええ。ですから俺は」 「瑞希。あんたはどうなの? 智也くんのとこに行きたいの?」 瑞希はさっきから身体ごと斜めを向いて、母親と目を合わせようともしない。 叔母はイライラした顔で瑞希を睨んでから、智也の方に向き直り 「この子がちょっと特殊な趣味だってことは、智也くんは知ってるのね?」 「特殊な趣味って、なんだよ、その言い方」 「あんたは黙ってて。智也くん? 君はそれを承知で瑞希を預かってくれるのね?」 早口な叔母が、ひどくゆっくりと念を押してくる。智也は真顔で頷いて 「ええ。瑞希くんからきちんと話は聞いてますから。それに俺は、別に特殊なことだとは」 「だったらお願いするわ。もちろん、かかった費用は言ってくれれば全部出します。智也くんさえよかったら、瑞希をしばらく預かってちょうだい」 叔母はせっかちに遮って結論を出すと 「瑞希。自分のことは出来るだけ自分でしなさい。智也くんのお仕事の邪魔にならないようにね」 ひどくあっさり出た結論に驚いたのか、瑞希はここに来て初めて、自分の母親に顔を向けた。 「反対しないの? え。母さん、いいの?」 「別に反対はしないわ。あんたがそうした方がいいと思うんならね。でもひとつだけ聞いておく。亨くん……だっけ? あの子とのこと、今後あんたはどうしたいの?」 「どう……したいって……」 「あんたがその子との関係を続けたいなら、お母さん、あんたとはもう関わりたくないの」 叔母の言葉に、瑞希の顔が歪む。智也は慌てて身を乗り出した。 「叔母さん、待ってください。その件はまだ」 「智也くんは黙ってて。これは私と瑞希の問題なの」 「関わりたくないって……親子の縁を切るってこと?」 「切るって言って簡単に切れるもんじゃないわ。あんたはまだ学生で未成年だしね。でも、出来れば母さん、お弟子さんたちへの手前もあるから、この件であんたとこれ以上関わるのはごめんなの」 瑞希はきゅっと眉を寄せた。 「それってつまり、僕にあの家、出てけってこと?……だよね?」 叔母はカップを持ち上げてコーヒーをひと口啜ると、静かにソーサーに戻し、ふうっと吐息を漏らすと 「お母さんね、あんたの……同性愛っていうの? 信じたくないし、認める気はないわ。自分の息子が……男とあんなことしている写真見せられて、平気な母親なんていると思う?」 瑞希は母親からぷいっと顔を逸らした。

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