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第1話
それは朱雀宗 にとって突然のできごとだった。
とあるパーティで話したことから親交のある英国人の社長から、電話がかかってきたからだ。
今はたしか彼の母国に帰っているはずだった。
『うちのかわいい息子が君の写真を見て気に入っちゃってね。どうしてもときかないから君のところで預かってもらえないかな。もしどうしても気に入らなかったら、一月後に迎えにいくから、よろしく頼むよ』
そう言われて呆然としたところにオフィスにしてる部屋の玄関チャイムが鳴った。
「はじめまして、ルージュ・ローゼマリーって言います。
僕をあなたのお嫁さんにしてください。お願いします。旦那様」
そういって金髪に琥珀色の瞳をした少年は、首筋に丈夫な黄色いリボンを巻き、オレンジの振り袖を着て不安そうにだけど愛らしく笑っていた。
青年は少年から香るはちみつの香りにめまいがした、がそれを理性で振り払った。
「ミスターローゼマリー。お父様から聞いてないかもしれませんが、俺は生涯、妻もそして、番も持つ気はないんです」
俺の言葉に驚いたのか目を見開き、それでも少年は微笑んだ。
「一月だけ……そばにおいてくれませんか。抑制剤もちゃんと飲みますし、チョーカーもはずしません。
無理強いはしません。
一目惚れで……初恋なんです。思い出をいただけませんか」
少年は懇願するようにこちらを見つめた
「……わかりました。俺のどこがそんなにいいかはわかりませんが、一月だけです。
一緒に暮らしましょう。一月だけですよ」
こんなんだから、朱雀は人がいいと友人にも言われるのだ。
単身で異国の地に来た少年をむげには追い返せない。
こうして、朱雀宗の我慢比べとルージュ・ローゼマリーの押し掛け女房生活が始まった。
(続かない)
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