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第2話
宗は、自宅のマンションにまだいるであろう通いのお手伝いさんに連絡をいれると、仕事場においてある車にルージュをのせた。
マンションにつくと用心のため駐車場まで一緒にいき、そのまま一緒に上にあがった。
玄関の扉を開けるとそこには通いのお手伝いの洋子さんが玄関のところで錠剤と水の入ったコップをもって待っていた。
「おかえりなさいませ、おぼっちゃま。ほら、例のおくすりですよ」
「おぼっちゃまはやめてくれっていつもいってるのに」
「ふふ、宗さまはいつまでたってもおぼっちゃまですよ」
宗は洋子さんといつもの会話をすると、ルージュを紹介するまえにわたされたそれを飲み干し、空のコップを洋子さんに手渡した。
「洋子さん、この子が知り合いから預かることになったミスタールージュ・ローゼマリー」
「朱雀さま、ルージュでいいです」
「わかった。ルージュ……くんでいいかな。出会ったばっかりだし。じゃあ、俺は宗でいいよ。
この人は洋子さん、通いのお手伝いさんなんだけど、この一ヶ月の間、住み込んでもらうことになると思う。
洋子さん、いったん荷物をとりにいかなきゃだよね?」
「宗さま。連絡しましたら、息子が持ってきてくれるみたいです。宗様は、夕食前まで自室にいるつもりですか?」
「うん、そのつもりだよ。じゃあ、ルージュくん、またあとで。わからないことは洋子さんに聞いてくれる?洋子さんも……聞かれたら何でも答えてあげていいからね」
「はい、わかってます、宗様」
把握した顔でうなずく洋子とは正反対にルージュがわけもわからず不安そうにいう。
「は、はい。宗さま……?」
宗は安心させるように微笑んだ。
「大丈夫、妙齢のオメガである君を社会的に困らせないための措置だから。じゃあ、洋子さん、戻ってきて夕食ができたら呼んでくれる?」
「はい、わかりましたよ。ささ、洋子たちに構わずいってください」
「わかったよ」
そう笑うと廊下にあるドアのひとつに入っていった。
「さてと、こちらの仕事をしますかね」
洋子はそういって玄関のたなの上にある小さな引き出しのついた物入れからじゃらっと鍵のつらなったものを取り出した。
そうして宗のはいっていったドアのまえにいくと外から鍵をかけた。
「さてと、これで大丈夫ですかね」
「あの……」
「どうしました?ローゼマリーさま」
「洋子……さんもルージュでいいです。あの、そういうのアルファにしたのはじめてみました」
「ああ……そうですね。世間はオメガを閉じ込めてしまうことが多いですからね。
宗様は、アルファばかりが自由にしている世間の風潮を嫌ってらっしゃるから」
「その……なんで、ですか。さっきも、見た目からオメガってわかる僕のことを普通はみんなミスって呼ぶのに、ミスタと呼んでくれました」
洋子は優しい眼差しでみた。
「そうですね、宗様を慕ってこられたんですもの、気になりますよね」
「は、はい」
ルージュは指摘されて恥ずかしそうに頬を赤らめた。
それを洋子は優しく見つめる。
「先程の宗様からの連絡にそう書いてありましたし、その眼差しは恋する者のそれですもの」
それをきいてルージュはさらに恥ずかしそうにもじもじした。
「ふふ、では、夕食の下ごしらえは終わっておりますし、ルージュ様の分の追加の食材も息子が持ってきてくれますから、少しお話ししましょうか」
洋子はダイニングへとルージュを誘った。
「宗様のお母様……オメガ男性として生まれた茜様のお話を」
洋子は懐かしむようにしかし、寂しそうに微笑んだ。
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