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番外編「ふたりの未来(七夕編)」

(本編と雰囲気が違ってハッピーな感じです!ご注意を!) これは、先の未来の話、ふたりの思いが通じあったあとの話。 「そういえばもうすぐ七夕だっけ」 ルージュと食事しているときにふと思い出した。 「織姫と彦星だね!」 ルージュは目を輝かせた。 「それもナニーから聞いたの?」 「そう、ナニーから!ナニーは日本のことなんでも教えてくれた!」 ルージュが言うナニーとは、母を幼少期になくしたルージュに母代わりに雇われたオメガ女性らしい。 日本人オメガだったが、子どもを生んですぐ夫をなくし、子持ちで路頭に迷いそうなになったところをルージュの父親が雇ったらしい。 聞いてる限り大分博識で教え上手の人だ。 「七夕、なにする?」 「定番に笹の飾り付けかなぁ。 洋子さん、笹用意できる?」 「夫に言えば可能かと。帰ったらいっておきます」 洋子の夫は造園業をしているので、笹を入手することは難しくはない。 洋子はもう通いの家政婦に戻っている。 もちろん、ルージュの発情期のときなどは泊まってもらうことはある。 だが、もう住み込む必要はないからだ。 宗とルージュが無事にまとまったので。 もともと、洋子の夫が造園業で成功しているのであまり働く必要はないのだが、宗の母への恩と宗への育ての親的情で手伝いをしてくれてるところがあったからだ。 ルージュは例のナニーの仕込みで家事がほぼ完璧にできるので、最近の洋子さんはその補助に回っている。 仲の良い姑と嫁という感じでうまくやってるらしい。 とある理由でこれからはまた泊まり込んでくれることも必要になるかもしれないが。 「笹!お願い事を吊るすの?」 「吊るすね。そのへんも用意しておこうか。 この家での最後の思い出になるかもしれないし」 「そうだね。体調がおちついたらお引っ越し!」 ルージュは緩い服をきた、まだ薄いお腹をなでた。 ルージュのおなかにふたりの子どもが宿っている。 まだ安定期にはなっていないため、ルージュのためにも慎重に動きたかった。 子どものためにもルージュのためにも、安定期にはいったら、ここよりも大きい庭つきの屋敷に引っ越すことになっている。 もちろん、思い出のあるこの部屋はこのまま残しておくが。 「新しいおうちも、楽しみ!」 ルージュは楽しそうに笑った。 来日当初はしおらしくしていたが本来は活発な性質らしく。 新しい家に移って子どもも生まれたら、子どもと一緒に活発に動き回るんだろうかと、宗は未来の生活に想いを馳せた。 七夕当日、宗はふたりで笹の飾りつけをしていた。 手製の織姫と彦星も作り、お互いの願い事も飾った。 ルージュの『宗との子供が自由にいきられますように!』という願いと、『紅とずっと幸せに暮らせますように』という宗の願いを一緒に。 二人は短冊を見て微笑み合う。 台所で七夕のごちそうを作っていた洋子から声がかかかった。 「息子たちがもうすぐ来るそうですから、宗様はこっちを手伝ってください!ルージュ様は椅子に座って息子たちをでむかえてくださいな」 今日は洋子の夫と息子夫婦と孫を迎えてちょっとしたパーティをすることになっている。 宗とルージュは顔を見合わせて、声を揃える。 「「はーい!」」 各々の速度で駆け出すように動く二人を手製の織姫と彦星が仲良むつまじく見ていた。

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