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第59話 【最終話】大団円

こうして、俺たちは仁乃を精神的にも肉体的にも堕とすことに成功した。 仁乃はあれからというもの、すっかり俺に従順になった。 大人しい仁乃は、ただの好青年のように見えて不思議だった。 でも、もしかすると本来仁乃はあのように振る舞いたかったわけではないのかもしれない。父親の性癖がかなり歪んでいるようなので、自分の精神を安定させるために行っていた加虐行為だったのかも知れない。 この日俺たちは賀茂さんの家のリビングに集まっていた。 「いやー、よかったよかった。亜巳くん、無事に復讐完遂おめでとう」 「ありがとう賀茂さん」 賀茂さんが今日はダージリンのセカンドフラッシュを淹れてくれていた。 甘くて深みのある果実のような香り。 下手なりに、俺と純でクッキーも焼いていた。 「亜巳様の作ったクッキーめちゃくちゃ美味いです!」 坂本が嬉しそうに食べてくれている。そこへ純が噛み付く。 「はぁ?俺も一緒に作ったんだけど!?」 「え…?ああ、はい。純様の味もしますねー。はいはい」 「お前なぁ!」 「あ、そうだ。気になってたんだけど、純はなんで坂本と仲悪いの?」 俺はずっと気になっていたことを聞いてみた。 すると純と坂本が顔を一瞬見合わせてプイッとお互いそっぽを向いた。 「あはは、この二人前に付き合ってたんだよ」 「えっ!?」 「ちょっと賀茂さん!!なんで余計なこと言うの!?やめてよ黒歴史なんだから消したい記憶なのに!」 「純様そこまで言わなくても…」 えーーー。そういうことかぁ。 「お似合いな感じするけど、なんで別れちゃったの?」 「亜巳、やめてくれる?誰がこのバカ犬とお似合いだって?」 「え、なんか…いえ、なんでもないです」 二人とも何があったんだよ…。 ここでピンポーンとインターホンが鳴った。 来客?誰かな。 賀茂さんが対応しに玄関に行った。 俺たちはそのまま談笑していたのだが、賀茂さんが連れてきた人物を見て俺はティーカップを落としそうになった。 「ばあちゃん…!?」 ずっと自分の祖母だと思っていて、事故後に目覚めた時本当の身内ではないと教えられた人物だった。 俺はあまりにも懐かしくて駆け寄って手を取った。 「ばあちゃん…ばあちゃん…元気にしてた?」 「亜巳こそ…元気そうで安心したわ。…ああ、失礼しました。亜巳様とお呼びしないといけませんね」 「何言ってるの!そんなのいいよ。でもどうして?」 俺は賀茂さんを見上げた。 「今度からこの家のハウスキーパーを彼女にお願いすることになったんだ」 「え!そうなの!?」 「ちょうど今の通いのハウスキーパーが辞めることになってしまってね。家に来て貰えば、この先も亜巳くんといつでも会えるだろう?」 「賀茂さん…!俺、ありがとう…う、うぅっ…よかった…よかっ…」 「亜巳…おいで…よしよし」 ばあちゃんが俺を抱きしめて撫でてくれた。 もう家族には会えないって思っていたからすごく嬉しかった。 他人だって教えられたけど、俺にとってはずっと育ててくれたばあちゃんに違いなかった。 その後話し合った結果、週に一回は俺と小山田の住むマンションにもハウスキーパーとして来てくれることになった。 家事なんて別にしなくていいから、俺とお茶しに来てくれるだけで十分だ。 とにかく嬉しくて仕方ない。 賀茂さんは俺が復讐を終えたら会わせようとずっと前から考えてくれていたそうだ。 「よかったな、亜巳」 この再会に小山田も喜んでくれた。 初めて会わせる恋人が男でばあちゃんもびっくりしていたけど、小山田は高齢者に優しいのでばあちゃんも小山田のことをすぐに気に入った。 俺の個人的な復讐劇はこれで終わりだ。 だけど、世の中には酷い目に遭いながら声もあげられず、泣き寝入りしている人達がたくさんいる。 犯罪を犯しながら、のうのうと甘い汁を吸っている奴らがいる。 賀茂さんは、俺たちを使ってそういう悪党を懲らしめるために日夜動いている。 俺は今後も女王様として世直しの一助を担うつもりだ。 Salomeに通うお偉いさんの力を借りて、俺は悪事に鞭をふるう。 根性の曲がった悪党は俺の足元に跪くのだ! 〈完〉 ----------------------------- このようなめちゃくちゃな設定にも関わらず、最後までお読みくださった方々、誠にありがとうございました。 本当はさっさと復讐を終えて世直し編を書いていく水戸黄門的なノリの話にするつもりだったのですが、思ったよりいじめシーンも復讐シーンも長くなって結果的に復讐が目的の話になりました。 個人的には設定を思い付いたのが楽しくて、祭りとか神様とかノリノリで書いたのですが、正直最早BLじゃないし誰が読むのか?と悩んでもいました。 続編として亜巳と小山田の子作り編を考えてます。オメガバースが流行ってるんだから、神が憑いてるんだしなんでもありだよね、と思ってます。(は?) またこのような頭のおかしい話しでも読んでくださるという方がいらっしゃいましたら、続編も見てやってください。

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