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第1話
ある日の深夜
マンションに帰り着くと、エントランス前で蹲っている塊を見つけた。
「酒臭いな。」
慣れぬ深酒でもしたのだろうか。
沢渡辰巳(さわたりたつみ)は、オレンジ頭の青年を抱え起こして自分の部屋へと足を向けた。
「ただいま。」
誰もいない室内に声をかけて、電気をつける。
一旦床に降ろしていた青年を抱え、自室のベッドへと運んだ。
もう1人の家主はまだ帰っていないようだ。
──────
「んぅ…」
それからしばらくして、ベッドの上の塊が動いた。
「起きたのか?」
用意していたミネラルウォーターの蓋を開け、青年に手渡してやる。
「えっと…貴方は…?ここどこ…」
少しずつ覚醒してきたのだろう、青年が慌て始めた。
「とりあえず落ち着いたらどうだ。危険な物は何も入っていないから少しでも飲め。飲んだら名前を教えてくれたら助かるな。」
少しずつ落ち着いてきたようで、半分ほどミネラルウォーターを飲み干した青年が口を開いた。
「冴木遊馬(さえきゆうま)です。すみません、ご迷惑をおかけして。」
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