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第9話 破滅

そしてある日事件が起きた。 僕は体中に渦巻く熱を持て余しながら、学校にどうにか通っていた。 いつも熱があるような感覚で、怠くてふらふらする感覚が抜けない。 その日座学を終えて講義室を出ようとしたとき、上野とぶつかった。 「あ、ごめん…」 僕は咄嗟に謝ったが、これは話しかけたことにはならないよね?とちょっと気になった。 そのまま通り過ぎようとしたけど、大きな手で手首を掴まれて講義室の中に引きずり込まれた。 え…? 「お前、そんな姿で男を誘惑して抱いてもらおうっていうのか?」 「え、なに?」 「自分がどんな顔してるかわかっているか?」 「そんなの知らな…」 「いやらしい奴だ!」 講義室の机の上に押し倒された。 なに?どうしたの?? いつもの優しい上野とは人が違っていた。 目は落ち窪んでギラギラと光っている。しばらく見ないうちに痩せたようにも感じる。 「上野…?話しかけられたくないんだと思ってたんだよ。嫌なことしたんなら謝るから、どけてよ」 「はっ!謝るだって?」 「重たいよ。悪いけど今体調が良くないんだ。乱暴しないで」 「黙れ!」 「ひっ」 大きな声で威嚇されて僕はビクッと首をすくめた。 「お前のせいで…お前のせいで俺は…くそ!」 そう言って噛み付くようにキスしてきた。 「んんっ!」 唾液で口の周りがベタベタになるほど貪られる。 「上野、怖いよお願い止めて!」 僕が懇願しても、上野はもう聞こえていないようだった。 「お前が俺を誘惑したんだ…!お前が…」 その声を聞いて僕はハッとした。 僕が誘惑した? そして痣のある脇腹を無意識に手で押さえた。 「僕のせい…」 だとしたら、今すぐに止めさせないと! このままセックスしたら上野は正気に戻れなくなる。 「ダメ、上野やめて!お願い!いや!」 「静かにしろ…」 「んっあん!嫌だったら!上野お願い!止めて!」 僕がそうやって抵抗していたその時だ。 「おい、どうした?」 そう言って講師が部屋に入ってきた。 僕と上野は硬直した。 「お前!何やってるんだ!!」 そう言ってその講師は僕から上野を引き剥がした。 「君大丈夫か?」 「だ、大丈夫…です…」 「ここをどこだと思ってるんだ!」 ヤバい…どうしよう… 僕は顔中唾液で濡れているし、着ていたシャツはボタンを引きちぎられて肩まではだけている。 「すいません……俺が無理やり犯そうとしました」 はあ!?なんてこと言うんだよ! 僕は驚いて咄嗟に上野をかばおうとした。 「ち、ちがいます!あの、ふざけてただけで…」 「ふざけてるようには見えない。悪いがこのままにしておくわけにはいかないから」 そして上に報告されることになってしまった。 なんで…?なんでこんなことになるの… 言い訳できたかもしれないのに、どうして犯そうとしたなんて言ったの…? 僕には上野の言動が理解できなかった。

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