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第3話
山と言うには低く、丘と呼ぶには標高が高い山道を一台の車が頂上に向けて登っていく。
紅葉の盛りも過ぎようとする小さな山は個人が所有している土地だ。
私有地であるため所有者以外は通行できない私道もあるが、所有者の利便性を踏まえて他人でも通行もできる県道も通っている。
私道の方は道の狭さと不便さからかほとんど車が通らない。だが迂回せずに市から市へ移動可能な利便性が高い県道の方はそこそこ車の数も多かった。
ハンドルを握る仲二見 昊 が選んだ道は県道ではなく私道の方だった。
それも無断侵入ではなく、事前に所有者に許可をとった上で私道に車を走らせている。
きちんと連絡すれば所有者は寛大で、予め立入禁止の立て看板と私道の柵をどかしてくれるのだ。
つづら折りの狭い山道をファミリーカータイプの車は軽やかに登っていく。よく見れば屋根の部分は開閉が可能なポップアップルーフで、キャンプに適した車両は四輪駆動を備えているのだろう。
本格的なキャンピングカーではないが、車中泊も可能なファミリーカータイプのそれはキャンプブームもあってか人気車種だった。
車のタイプはもちろんのこと、後部座席に置かれた荷物から彼らは車中泊を視野に入れたドライブ旅行なのだと知れる。
車中泊にはいい季節だ。茹だるような暑さも凍えるよな寒さもない。少し厚めの断熱シートと何枚かの毛布があれば人肌の恋しい季節でも心地よく眠れそうだ。
ただ運転席の男の容貌は、爽やかなアウトドアが不釣り合いな派手さではあるのだが。
山道を安全運転で進む昊は、アッシュベージュの髪を緩く伸ばした華やかな容姿の色男だ。
垂れ目がちの瞳や吐息も艶めかしく感じる唇は、腐る直前の果物にも似た、甘くてくどい蠱惑の匂いを放っている。見た目はもちろんのこと、所作の一つ一つに遊び慣れた風情が見て取れた。
自然光が溢れる昼の紅葉スポットよりも、人工の灯が連なる真夜中の都会が似合いそうな男、それがホストという職に就く昊だ。
対照的に助手席に座る男は年齢こそ昊と同世代だが、見た目も雰囲気も間逆な色を持っていた。
きちんと櫛目を入れたビジネスツーブロックは清潔感と謹厳さに満ち溢れている。染毛など一度もしたことがなさそうな髪は古典で表現するなら、ぬばたまの髪と評するところか。もっとも彼は古典教師ではなく、数学教師なのだが。
理知的な黒い瞳とロングサイズのコーヒーを飲む口元は磨いた金属のように硬質で、こちらは昼というより清浄な朝を思わせる佇まいの男、三枝 賢人 だった。
見た目や生活圏からも職種の違いを見せる二人だったが、隣り合う二人の距離感に溝は感じられず、それどころか妙な親近感すら漂わせている。
「……それで弟がおにーちゃんの充実生活に対し、もげろとか言うの、ヒドくない? 自分も恋人を作ればいいのに……嫉妬は良くないよぇ」
「弟さんは兄離れができていないのかな? 一度会って見たいものだけど……これでも生徒の話はよく聞く方だからね」
「――あー……あー……弟は……うん、そのうちね?」
秋の風を感じながら話す内容は、何気ない雑談から互いの仕事話や近況など。職種は違っても同世代なだけに話す内容は多岐に渡るのだろう。
だが仲の良い友人同士に見えた関係は、少し開けた場所に着くまでだった。
私道の道なりに続く手入れされた小さな場所は、私有地にも関わらず、その必要性を問い質したい公衆トイレまで備えた狭い駐車場だった。
赤や橙や黄色に彩られた紅葉の枝が天井となる駐車場で昊は車を停める。ハンドルに両手をついて、甘い毒でも吐くようにため息を一つ。
ゆるやかに流し見る賢人を瞳に捉え、筆で描くように目を細めてみせた。
途端に空気が変わった。
親密な友人同士から、絶対的な主従のそれに――。
明るい秋の日差しが、開いたポップアップルーフの奥までを照らし出す。ポップアップルーフは二メートル近い車体の上全体に小さなテントを張るようなイメージだ。
車体後部はポップアップルーフの傘は低く車体全部に向かうにつれて低くなっている。
開いたポップアップルーフの高さは大人の座高よりすこし高いほど。
それでも二メートル近い高さから眺める風景は開放感がある。――厳格な賢人が、あられもなく肌を晒すほどに。
夏ほど強くない日差しは肌に刺さらないが、それでも太陽に舐められた賢人の肌は少し低い気温もあってか細かく震えていた。
「ほら、尻の穴の皺まで日光浴してみせろ」
「……ん、ぁ……、あぁ……っ」
ポップアップルーフの左右の支柱に両手首を繋がれ、背後から昊に抱えられた賢人は少し冷たい空気に熱い呼気を混ぜ込んで震える。
二メートル弱の高い場所から覗ける秋の風景はまさに絶景。
ただ、自分が秋の風景を見ているのか、秋風に自分の肌が覗かれているのかわからない。
常なら隙なく整えた髪もネクタイも乱れて解け、肌を晒すことを良しとしないはずの賢人の下肢はすでに剝き出し状態だった。
真っ白なYシャツがしっとりと濡れ、下肢に残るのは太もものシャツガーターと脹脛のソックスガーター、そして黒い靴下だ。
きちんとしたスーツスタイルを好む賢人は、シャツが撓まないようにシャツガーターを愛用している。
女性のガーターベルトと同じで太ももにベルトを巻き、シャツの裾を前後のクリップで留めて使用するのだ。これはソックスガーターの使い方も同じだ。
普段は身だしなみの正しさを教える禁欲的なガーターが、着衣が乱れてしまえば逆にひどく卑猥に見えてしまう。
昊はそんな賢人の清潔さと淫らさを併せ持つ賢人がたまらなく好きだ。
だからこそ昊は賢人を暴く。
分厚く凝り固まった理性を暴いて壊して開放し、淫靡に再構築してやるのだ。
「……恥ずかしいと思わないのか? 外で尻を曝け出して――普段の慎み深さはまるっきりの嘘だって、ヒクつく尻穴が証明しているぜ?」
賢人の背中に胸を密着させ、赤くなった耳朶を噛みながら囁く。
昊の言葉の一音一音が刃となって、実直に守ってきた賢人の理性を寸刻みにしていくかのようだ。
大人として、教師として培ってきた謹厳さはとうに失われてしまっている。
背後から密着状態になって賢人のM字に開いた膝裏に腕を通し、鼠径部に近い尻肉を掴んで乱暴に押し広げた昊は、崩れゆく賢人の表情を視姦している。
奥まった肉合いに風を感じ、黒い靴下包まれた爪先を跳ねさせながら賢人は呻いた。
「……あ、ぁ……み、、見られ……」
「そうだな。人が来ないとは限らないよな? ――なのにいつもより反応がいいのはどうしてだ? びしょびしょに我慢汁を垂らして、とんだ変態教師だな?」
尻肉を掴んだまま、左右の人差し指を伸ばしてひくひくと蠢く賢人のアナルに触れる。途端に賢人の腰が跳ねた。
「ずぶずぶ飲み込むなぁ? そんなに尻を弄って欲しかったのか? ええ? 外だって言うのに、ぱっくり開いてうねる穴を見て欲しいんだろう?」
「……ん、ぁ、あぁ……ッ、なか、……な、なか……見えちゃ……う、うぅぅッッ」
昊が人差し指の第一関節部分だけを飲み込ませ、鈎をかけるように左右に広げてやれば、賢人は体をのけ反らせて痙攣した。
「太陽に犯されたみたいにヨガってやがる。ほら、お前のココはなんだった? ちゃんと太陽に向っていってみろ!」
賢人は子供の頃に厳格な祖母に言われた言葉を思い出す。
よろしいですか、賢人さん。おてんとうさまはご覧になっています。恥ずかしくない生き方を心得なさい。
おてんとうは天道、太陽のことだ。そして自然の道理でもある。
太陽は常に人を見ていて、悪いことはできないと幼子に教える躾の一つだ。
その太陽に見られている。
いやらしい姿を、淫らな本質を、虐げられて喜ぶ浅ましさを。
だから賢人は言わねばならなかった。
太陽に、天道に、自分の真理を――。
「……べ、べん……き、便器、です……ッ! お、おちんぽ用の……ザーメン……肉便器、です……ッッ……ん゛ん゛ん゛うぅぅぅぅちんぽ便器ですうぅうぅっっ!」
声に出した途端、凄まじい快楽が駆け抜けた。ほんの少し指で穿られただけなのに、体の奥が疼き、そのまま内側から殴られたみたいにびゅくぴゅくと力なく射精してしまう。
「だらしない肉便器だなぁっ? チンポ用に癖にチンポ無しでイキやがって……!」
ゆるい射精で敏感になった体を二本の指で音を鳴らして掻き回す。その乱暴な手付きに獣じみた声を山々に響かせてまた絶頂してしまうほど、外で犯されると賢人は脳が肉欲で焼き切れてしまうのだ。
「…だらしない肉便器穴は塞いでやらないとな? ほら舌を出せ」
昊の指が引き抜かれてしまうと、その切なさにシャツガーターを着けたままの腿が震え、指の感触を探して穴が窄んでしまった。
「肉便器穴の栓だ。さっさとヨダレをこすりつけろ」
潤んだ賢人の顔を縦に渡るように晒されたのは、透明の男性器を模した長大なバイブだ。
うなぎ型と言われる双頭バイブはおそろしく長い。当然だが賢人に挿入されるのはごく一部。きっと尻尾のように残りを垂らすことになるだろう。
なんて惨めで、なんて興奮するのか。
賢人は舌を伸ばして夢中で舐めた。
透明な双頭バイブが秋空の青さと太陽の白さを歪ませて賢人の瞳に映していた。
「……ん、ぉ……お゛ぉぉお゛ぃ、ん゛ッッ」
ポップアップルーフがあるとはいえ、車の上。そんな場所に足をM字開脚したまま、賢人は腰を揺らしながら身悶えている。
少し視線を下げれば、自分の股間から不規則な動きを見せる双頭バイブが踊っていた。
断末魔のうなぎか蛇が蠢くように悩ましく動いては賢人の穴を嬲り、お前の穴はこの動きと同じように虐められてるのだと見せつけながら、はみ出たバイブ部分が揺れて車体や腿を叩く。
粘膜がバイブの摩擦で溶けそうに熱い。不自由な態勢でも尻をうねらせつつ腰を振る姿に。普段の理性や知性はかけらも見られない。
ぐっと背後から頭を掴まれた。
顔をのけ反らされた唇に押し当ててきたのは、熱く滾った肉の凶器。浮き出た太い血管が賢人の端正だった唇の形を歪ませる。昊に命令されるよりも早く、頭で考えるよりも早く、ほとんど本能で舌が突き出た。
雄の味とにおいが充満し、浮かされたまま唇に感じる陰茎の血管を舐めしゃぶった。
「自動チンポセンサーがついた便器は便利だね」
嘲笑う声にさえ恥骨が痺れてしまう。人が来ればセンサーに反応して自然に蓋が開く便器以下の存在になりながらも、逞しく勃起した陰茎が鼻先と唇に押し付けられれば嬉しかった。あ、あ、と言葉にならない呻きを唾液ともに零しながら吸い付いてしゃぶりついていく。
明るい太陽に向けて股を広げ、激しく蠢く透明色のバイブを反射させた賢人に規律で縛られた普段の自分はない。
理性と倫理で雁字搦めになっていた自分の開放してくれる唯一の存在。
昊が望むなら自分は何にでもなれるし何だってできる。
昊も同じだ。
窮屈に縮こまっていた賢人が開放されるなら、何でもしてやりたいし何でも手伝いたい。
「……んぁ、あ゛……ッ、あぁあぁあぁあぁぁ……ッ、い、いく……いき、ま……す……っ!」
宣言した途端、昊の亀頭が口いっぱいにねじ込まれた。
「ほら、この口便器、使ってやるから、派手に、イケよ……!」
舌や頬肉のすべてを性器に変えさせた昊が、汗で湿ったYシャツ越しに浮かぶ両方の乳首を乱暴に摘みあげる、痛みとそれ以上の快楽を知った体が激しく痙攣した。
男としての絶頂ではなく、メスとしての絶頂――メスイキだ。
「んおっ……ぉ……ッ……あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……ッッ」
口いっぱいに肉の熱を頬張り、激しく尻を振ったせいでシャツガーターのクリップを外しながら腰が跳ねる。
ずりゅんっと卑猥な音を鳴らし、腸壁をみっちりと埋め尽くしていた双頭バイブが放り出された。
長さと重さのせいか勢いをつけながら抜け落ちれば、双頭の淫らな形状が賢人の前立腺と膀胱を挽き潰すかのようずり落ちていく。
その重く激しい喪失は、ドライブ中に飲んていたコーヒーの残滓を誘発し、太陽に向けて黄色い液体となってじょぼじょぼと溢れていった。
「は、便器が小便漏らしてんのか……笑えるね」
メスイキの余韻か、賢人の失禁は勢いがない。止めることができない失禁は細く長く続き、その間仲、昊は喉まで犯して賢人の口を性器から口便器に作り変えていた。
「自分で汚したんだ。自分で掃除するのは当たり前だろ?」
ポップアップルーフから降りた賢人は前屈みなって車についた汚れを舌で舐めとっていた。
糊が効いていたはずのYシャツはぐしゃぐしゃに皺が寄ってしまい、教師らしい清廉さは影も形もない。
シャツの裾から外れたクリップが次に留めているのは白い布地だけではなく、それに包まれた賢人の乳首だ。
シャツガーターのクリップを使い、シャツ越しに賢人の乳首を乳輪ごと摘んでいた。
ベルト状の本体が太ももにある以上、乳首を挟まれればどうしても賢人は尻を突き出して屈むしかない。
日焼けがない白い尻には、昊の手形で作られた紅葉が山の紅葉より美しく目を引いている。
「さて、と……お前の盛大なお漏らしに付き合うわけじゃないが、俺も小便したいんだが……どっちを使えばいい?」
指環の嵌った昊の指が指したのは、私有地での存在意義がわからない公衆便所。
それを見た瞬間、賢人を襲った感情は“悋気”だった。
――あるのに。
――ここに、専用の肉便器があるのに。
賢人の長い指が自分の尻を割り開く。
双頭バイブで拡張されていた穴はまだ完全に閉じきっていない。
不自由な姿勢で賢人は振り返った。……知的だった顔に、劣情と悋気と欲望を込めた顔は、昊が震えるほどに凄艶で淫らだった。
どうか、と、哀願にも似た賢人の声が山の風に拾われて昊の耳に届く。
「……お願い、します……こ、ここの……肉便器、を……ご使用、ください……」
尻を開き、穴を広げて自ら便器として使われることを望むその姿。
甘い形で昊の唇が釣り上がった。
「あー……、そうだな。俺専用の肉便器がここに合ったわ。専用だからな。孕んだ腹みたいに注いでやるよ」
昊が足を踏み出した。
尻肉を掴む賢人の手ごと覆った昊の手付きは、言葉や態度よりもずっと優しかった。
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なお、私有地の山は猪狩牧場の所有
公衆トイレはオーナー趣味のプレイ用
シャツガーターとソックスガーターはエロい
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