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第4章ー第58話 心配の仕方はいろいろ

「これをなんとかしろ」  澤井は「体調はどうだ?」なんて言葉もなく、開口一番にそう言った。保住は苦笑してから、澤井の部屋の応接セットに山積みになっている書類を見渡す。 「ずい分と暴れたのではないですか」 「お前がいないのが悪い」 「おれのせいですか」  保住はそばの書類を手に取り、そして整理を始める。手伝う素振りもなく、澤井は自分の椅子にどっかりと座った。 「病み上がりなんだから、もう少し優しく扱ってくださいよ」 「今週、休めと言ったのに出てきたお前が悪い」 「それはそうですが」  書類の頭とお尻を見ながら、保住は書類を仕分けを始める。その様子をじっと見ていた澤井は、ふと声を上げた。 「どのくらいで終わる?」 「そうですね。さすがに一時間は、かかりそうです」 「そうか。なら、別な仕事をしていよう」 「どうぞ、そうしてください。見ていられても仕方がない」 「いちいち減らず口を叩くんだから、調子は戻ってきたようだな」  老眼眼鏡をかけて、澤井はパソコンを眺めながら言った。 「そうですね。ええ。結構、調子出てきましたね」  保住も書類を分ける手を止めることはないが、ふと顔を上げた。 「今回は、田口におれを預けてくれたんですね。ありがとうございます。大変面白い経験をさせてもらいました」 「別に。ただ、あいつは少しは使えるからな。お前のこともみれるかと思っただけだ」 「そうですか」  保住は、黙り込んで作業を続けた。  澤井は悪い人ではないのは、よく分かっている。セクハラやパワハラは日常なのに、嫌いになれない自分がいることも理解している。自分は、相当変わり者なのだろうと思わずにはいられない。 「ちゃんと出来たら、昼飯くらいおごってやる」 「局長とランチですか?」 「愚問」 「あまり食欲がありません。ご一緒しても、お相手にはならないかと」  老眼鏡を外して、澤井は保住を見る。 「だからだろ。どうせなにも食わない気だ。強制的に飯食わせてやる」 「ありがた迷惑ですけど。……ありがとうございます」  心配してくれているらしい。嫌なやつなのに。保住はソファに座りこみ、書類の整理を黙々とこなした。

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