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第34話

「え…?ちょ、竹内さん?」 「すまなかった。…軽々しくそんな事を聞いてしまって。」 自分よりずっと大きな身体を抱き締め、腕を伸ばして頭を撫でた。 初めは身体を固くしていた佐々木も、少しずつ力が抜いて。体温と、重みが方に伝わって。 思っていたより筋肉質。艶のある割に意外と硬い髪の毛が頬を擽る。 暗いせいで表情はわからないが、今はわからなくていい。 明るければきっと、俺はこんな事をしていない。 自身ですらどんな顔をしているのかわからないのだから、いっそ見えてない方が良いのかもしれない。 「たけ……っ、うちさ……。」 首にかかる熱い息で、佐々木の呼吸が乱れていくのが伝わった。 泣いているんだろうか。俺が変な事を聞いてしまったから。 昔の事を思い出してしまったのだろうか。 今だって、外は酷い雨が降り続き、雷の音も鳴り止まない。 風呂場のような狭い場所ではないにしろ、明かりは一切なく、恐怖を煽るには十分だ。 「大丈夫だから。…俺が居る。独りじゃない。」 なけなしの語彙力で、掛けれる限りの言葉をかけ続ければ 佐々木の呼吸は徐々に落ち着いてきた。 さて、これからどうするか。 暗くて時計は見えんが、恐らく健全な高校生であれば、もうそろそろ眠る時間帯であるのに間違いはないだろう。 「……寝室は奥にあるから案内するが…、眠れそうか?」 「……無理って言ったら…どうなるんスか?」 顔も上げず、耳に息が吹きかかる近距離で佐々木は応えた。 擽ったさに首をすくめ、硬い毛質の大型犬を愛でるみたいに濡れた髪に指を絡める。こんな事をしているせいで、相手が年頃の男だなんて意識は頭の端くれにも無かった。 「それなら、一緒に寝るか…?」 ビクンと一瞬飛び跳ねた佐々木の心情と、それから躊躇いを見せた意味。 それらを知る術を、俺は持ち合わせていない。

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