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第41話

「やー、ラーメン食いたいっスわ!ラーメン!」 「はぁ?」 運転中なんて事はそっちのけで、思わず佐々木の方を向く。 前に車が居なかったのが救いだ。後ろの奴は…まあ、すまん。 いや、だってこいつ…さっき焼肉弁当食ったところだぞ。俺だって流石にまだボケてはないから、記憶違いではない。冷えてもいない常温の硬い肉を美味そうに…しかも結構立派なサイズのだ。 え、おい、マジか…。 その細い身体の何処に無限の胃袋を隠し持っているんだ。 フードファイターかお前は。もしくはアレか。4つくらいあるのか、牛か? 「っははは!竹内さん驚きすぎっしょ!目ぇくりんくりんで可愛いっス写真撮っていいスか?」 「おいふざけるな。」 いつの間に充電器を挿したのか、復活したらしいスマホがカシャっと軽快な音を鳴らした。 慌てて佐々木の右手ごと手で覆ったものの、何となく遅かった…気がする。 現に、佐々木は画面を見て満足そうに微笑んでいる。 ……いったい何が楽しいんだか。脅迫にでも使うつもりか? 誘拐犯の顔面ですとでも言ってSNSにアップされる……とか? くっ、社会的抹殺はもう少し待ってもらいたい。俺だってまだ働き盛りの20代のリーマンだ。 「……ら、ららラーメン。ラーメンだな。うまい所に連れて行ってやる。」 だから晒さないでくれ… と、そう言いかけた瞬間、 佐々木がやったー!!とか言って大きな声を出すものだから、その言葉は喉の奥から出て来ることは無かった。驚きすぎて息が止まったわ。 「だって竹内さん、昨日の夜からタルト以外食ってないじゃないっスか。」 赤信号で車を停止。ちらりと横目に佐々木を見れば、当然のように目が合う。 「……見過ぎだ。」 「っへへ。」 街へと近づけば、やはり電気は復旧していた。 これなら職場近くのいつものラーメン屋も問題なく営業しているだろう。 時計を見れば11時を少し過ぎている。 よし、もう店は開いているはず。 ほんの少しだけスピードを上げて、俺と佐々木の乗る車はラーメン屋に向かい走り出した。

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