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第40話

外に出ると、昨日の夜はあんなにびしょ濡れだった地面はすっかりと乾いていた。 ところどころに残る水溜まりは日の光を反射させて、キラキラ光る世界が眩しい。 とはいっても、俺の靴までしっかり乾いてくれる事は勿論無く。 仕方がないのでいつもより底の薄いシークレットブーツを履いた。 これでも10㎝は高くなるのだが、悲しい事にこれでは佐々木と身長が変わらない……か、もしかしたら佐々木の方が大きいかもしれない。 くそ。高校生の癖に、俺のプライドをずたずたにしやがって。 …いや、自分で誘っておいて何を言っているんだ俺は。 だが、こうして歩いている途中にもひしひしと感じる佐々木の視線は強烈で。 そりゃ思わず悪態をついてしまいたくもなるって話だ。 「竹内さんと目線一緒だー。」 「……うるさい。」 「んへへー。なんか身長ひょこひょこ変わるから面白いっスね。」 「………それ以上言ったらお前の家に直行するからな。」 「えーー!」 玄関から少し離れた駐車場まで、会話が途切れる事はなく。 当たり前のように座られた助手席には、違和感の欠片もなく。 佐々木の生まれ持った性格なのだろうか。 この人懐っこさにやられ、つい距離感を見誤ってしまう。 誰とも深く関わりを持たないよう努めてきた俺の生き方を、佐々木という男はいとも簡単に覆してしまいそうで……何となく、怖い。 昨夜の雨をワイパーで拭い、市街地を目指してハンドルを握る。 折れた枝や、すっ飛んできた何処ぞの店の看板なんかが転がっている光景に驚きはしたものの、修理や撤去はまた大変になるんだろうなと他人事のように思った。 「…そういえば、どこか行きたい所とかないのか。」 自分から誘い出しておいて、これは情けないと思う。 全くのノープランで、年の離れた子供を楽しませられる“出来る彼氏力”みたいなものは持ち合わせていないからな。 「……ぅちさんが食いたい。」 「あ?何か言ったか?」 窓を開けていたせいで、珍しく小さな声で何かを呟いたその声を、正しく聞き取る事は残念ながら出来なかった。

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