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第65話

こういう時に限ってどうして忘れる。 確かに一人に慣れすぎて風呂上りに全裸のままビールとかよく飲むけど。でも今日じゃないだろう。 何がびっくりって結局パンツを履かずにやんわりとスウェットを履いて玄関まで来てしまったという事だ。 だってこんな時間…といってもまだ9時になったところだが、ちびっこは寝る時間だし外でこれ以上大声出されたらたまったもんじゃないのだ。 こ、これは致し方無い事だ。 「……早かったんだな。」 扉を開ければ学ラン姿の佐々木と目が合う。 目が合うといっても俺がぐんと上を向かなければ、交わることのない視線なのだが。 先ほどのバスタブと言いこいつと言い、何故こうも自らの身長をバカにされなければならないのか疑問だ。 バカに…しているつもりはないんだろうが。 「あーーやっと出てくれた! ピンポン壊れてんのかと思ってめっちゃ叫びましたー。今日もミニマムっスね。」 「…会って早々調子に乗るなよ。」 濡れた髪のままでは外から入る風が少し肌寒く、早く入れと顎を使って促し、さっさとリビングに向かった。 ──が、気持ち良いとも悪いとも言い難い独特の下半身の違和感に思わず身震いする。 さっきの自分の言葉を思い出しては背筋に嫌な汗まで垂れてきた。 だって一回冷静に考えてみろ。 本当に調子に乗っているのは誰だ。 慌ててパンツも履かずに客人を招き入れたのは誰だ。 高校生の前でノーパンスウェット姿の変質者は誰だ。 …………俺だよ。 俺の犯罪者レッテルは常に更新されつつあるらしい。いよいよヤバいんじゃないだろうか。 パトカーなんかとすれ違った日には心臓が爆発しそうに鼓動を速めるんだ。 その理由は、抗う事など到底出来ないであろうこの事実の後ろめたさから来るものだ。 「今日暇そうだったから早く上がっちゃいましたー。どうせ竹内さんも来ないし。」 「………そうか。」 君の目の前に居る竹内さん、パンツ履いてないけどな。 「今日一緒に居た人、あれ誰っスか?」 「あ?あー…部下だよ。会社の。」 俺だって別に会社ではちゃんとパンツ履いてるんだ。今は履いてないだけで。 「竹内さん、今日そわそわしてません?」 だってパンツ履いて無からな!!! 早くトイレでも何処へでも行ってくれ、少しでいいから。 ちょっとだけ俺を一人にしてはもらえないだろうか。 …という俺の訴えなんか知る由もなく佐々木はソファに寝転がるのだから、俺は前世でとんでもない罪でも犯したのかもしれない。

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