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第86話

夢にしてはやけにリアルなその光景。 一応頬を抓ってみるも、痛みは確かに感じた。 って事はやっぱり…。 「竹内、さん…?」 「んん…ささきぃ?どうしたぁ?」 夢じゃ…ない、よな。 どうしてこんな所にこの人がいるんだよ。俺の行く所知っててまさか追いかけて…来るわけないし。竹内さんに限って。 だとしたら何?たまたま旅行で来てたとか?すげえ偶然じゃん。何だそれ。 火照った顔で見上げてくる竹内さんのあまりの可愛さに耐えられず、高い空に散らばる名前も知らない星を暫く仰いだ。 「とりあえず…えっと、酔ってます?立てる?」 改めて見れば、竹内さんは何処ぞの旅館にでも泊まっているのか薄い浴衣を纏っている。 その浴衣も、多分彼にはサイズが少し大きすぎるみたいで、襟ははだけ、俺がもう少し右に寄ったら胸元が丸見えになるくらい緩まっていて。 …この人が無自覚エロっつーのはこの間ので十分理解はしたけど、ここまで来るといっその事計算なんじゃ無いかと疑いたくなるな。 「なぁ、ささきぃ…。」 「ん?」 「この煙草、いつもと違う…。」 「え?」 ふと唇に咥えられているそれに目を向けると、初めは気がつかなかったが竹内さんがいつも買っていく物とは銘柄も強さも何もかもが違っていた。 いつもメンソなのにレギュラーじゃん。突然どうしちゃったんだよ。 「…おれ、ちゃんと75番って…いったのに、違うの…出てきたぁ。」 「…〜〜〜っ!!」 あぁもう! 何なんだこの人は!! 75番は俺のバイト先だけ! 全国のコンビニの煙草の並びが全く同じと思うなよ!それに……その番号無意識に言ってるって事は俺のバイト先で買う頻度が一番高いって事じゃん? まあ…毎日買ってくんだからそうなんだろうけどさ。 「…俺買って来るっスよ。1分で戻るからちょい待っててください。知らない人について行っちゃダメっスからね?」 「んん〜…未成年が、たばこ…らめぇ…。」 「らめぇじゃないっスよ本当に!!もう!!」 これ以上は無理。もう俺マジで無理。勃つ。 今まで一体どれだけアンタをおかずにしてきたと思ってんだよ。イレギュラーにイレギュラー重ねたようなこんな状況で、泥酔した竹内さんを相手するのはガチで心臓に悪すぎる。 周りに人気がない事を確認し、竹内さんの愛煙する煙草を購入するため店の入り口へ走った。 年齢確認なんてされねーし。と言う謎の自信。 身長も低くはないし、私服だ。顔もガキくさくはない。…竹内さんには好評の顔面だしな。 それより今は… 「いぃーちっ!にーぃ!さぁあーんん…よー…」 この煩い人が通報されないか、そっちが心配で気が気じゃねえ!!

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