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第109話
「の、法月…これはあの、えっと…。」
俺のすぐ下で、珍しく頬を染め
恥ずかしそうに目を逸らす法月。
好意を向けられている自覚はあれど、まさか本当に、男の俺相手に…ここまで反応するだなんて、思っていなくて。
今現在、自分の置かれている状況も持たねばならない危機感も全て捨て去り、脳内の最も広い面積を陣取ったのは
“俺の部下…やっぱり顔が良い”だった。
いつ見ても誰が見ても、好みかどうかに関わらず皆が誉めたくなる顔立ちだ。そんな宝石級のウルトラハイパーイケメンフェイスが俺の真下で、それも照れ隠しで眉をクッと中心に寄せている。
そんな顰めっ面も絵になるなんて、お前は前世でどんな良い行いをしてきたんだよ。
「竹内さん、一回どいて下さい…。」
「あ、あぁ…いや、そうしたいのは山々なんだがな…。」
今でこそ足を止めてしまってはいるが、もう少しで履けるんだよ。本当に、あとちょっと、ぐっとすればスポっと行ける。
でもそれをするにはまた…法月の、立派に育ったアレを腿に押し付けなければならない訳で…。
「……そうですか。わかりました。退いてって忠告聞かなかったのは竹内さんですからね。」
「え、ぉわ!!」
視界は逆転し、薄い浴衣を一枚隔てただけの背中に冷えた床の温度が伝わる。
覆い被さる攻撃的なイケメンフェイスと後から来るいい匂い。顔のすぐ横に置かれた腕は、決して太くはないが筋肉質で、骨張った指が頬を撫でた。
股間にずっしりと沈み込んでくる法月の昂りは昨夜の佐々木を思い出させて、急に頭が熱くなる。
俺は何てことをしているんだ。
──佐々木の…大きかった。
こんな所、誰かに見られたらどうするんだ。
──熱くて、多分俺じゃもうアソコまでは到達しないだろうと言うくらい、高くまで反り上げていて…俺で、興奮してくれて。
“竹内さんってそんな節操なしだったわけ?ドン引きなんすけど俺”
…っ。
瞬時に、熱を持った身体から血の気が引いていく。全ての煩悩を喰らい尽くす、佐々木のたった一言。
あぁ、こういう事か。
確かに言うとおりだ。佐々木だけに留まらず、職場の同僚にまでふざけた事をして。
熱い息を吐く法月を制するように、肩にそっと手を置いた。
「悪い。法月…誤解、なんだ。離れてくれないか。」
「……竹内さん、っ。」
「頼む。離れて、くれ。」
また、法月の暗い顔。
俺が本心で訴えれば、この男が引いてくれるのはわかっていた。そしてすぐに、笑顔の仮面で繕う事も。
俺に嫌われないようにと気遣ってくれるのが、嬉しくて、痛いな。
「俺は、お前の気持ちには答えられないよ。今ので…改めて思った。…っ、悪い。」
「…っはは、やだな竹内さん。恋人になりたいだなんて言ってないじゃ無いですか。急に辞めて下さいよ。」
法月は俺から身を離すと、崩れた浴衣の襟を整えて立ち上がった。
まだ布を押し上げるそれが少し気になったが、俺のせいだとわかっているからこそ、見ないふりをする。
しかし、法月は違う。
俺の触れられたくない部分を見逃す事は無いのだ。
「……その、靴は…あの…………?」
まぁ、そうなるよな。
本日、俺の秘密を知る者が1人増えた。
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